今回は、中国原産といわれ日本でもよく知られている「キンモクセイ」を紹介します。
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木で、街路樹や庭木としてよく見られます。17世紀、江戸時代に雄株だけ渡来したとされています。したがって、実をつけません。日本国内では本州から九州まで広範囲に植栽されています。
写真のキンモクセイは、山梨市内のある森林セラピーロードの駐車場と市道との間を仕切るべく垣根代わりに植えられています。樹高は、2.5〜3mです。ふだんはキンモクセイがここにあることすら忘れていますが、9〜10月の花期になると、駐車場に車をとめドアを開けると同期に甘い香りが飛び込んで来ますので、それでこの樹があったことを思い出し花が咲いていることを確認することになります。森林セラピーのお客様もまず香りを感じてから周りに目をやってその存在を確認することになります。
駐車場はアスファルト敷ですが、その上に落下した花弁が描く模様が想定外の癒し効果があることをお客様から教えられました。ふだんどおり素通りするつもりでしたが、若い女性のお客様がここで立ち止まって動かなくなってしまいました。感極まった表情をされていましたので数分待ちました。そのあと彼女は『この様子に引き込まれてしまった、癒やされたというかホッとした気分、ふだんの生活を完全に忘れることができた、不思議な感覚です』と感想を伝えてくれたのです。森林セラピー的に言い換えると、彼女は“自然のなかに溶け込むことができた、自然から受け入れられたと思えた”ということになります。
風が吹くと花弁が動いて少しずつ模様が変わること(自然界の揺らぎ)もあり、見飽きることがないのも一因かもしれません。
森林セラピーの世界では、風の音・せせらぎ・野鳥の声・木々や草の揺れ・葉や草などの色合いや濃さ・木漏れ日・空気の流れや温度湿度・香りの変化など、自然界の持つリズム、揺らぎと称していますが、これらと本来人間が持っているリズムとシンクロナイズドすることで気持ちが安らぐといわれています。
日常生活ではあまり有効に使われていない五感を呼び戻し、ゆったりと自然・森林・植物と向き合ってみてはいかがでしょうか? きっと新しい気づきが生まれますよ!
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))