[スタンホペア]咲き方がおもしろいスタンホペア|ラン科Stanhopea属|エバーグリーン

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スタンホペア

スタンホペア

 

今回、紹介するのはスタンホペアというランの仲間です。20才くらいの頃、このランを図鑑で見たとき奇妙な花の咲き方に驚きました。と同時に「一度育ててみたいなあ」と思いました。「スタンホペア」という語感もなんとなくかわいらしいです(名前はスタンホープ伯爵という19世紀の人物に由来します)。

その後、幸いにして手に入れることができました。3年ほど育てて、開花したときには感動しました。そのとき開花したのは2輪、大株になると花付きも良くなるようですが、そこまで育てることはできませんでした(訳あって、現在その株は手元にありません)。

すごくおもしろい性質のランなので、栽培した経験も交えつつ、スタンホペアについて語りたいと思います。

スタンホペアの一種

スタンホペアの一種

 

スタンホペアは中南米に50数種が分布する、樹上などに根を張って生活する着生ランです。
春から秋が生長期で、新芽を出して1枚の大きな葉っぱを広げ、育っていきます。その後、新芽の株元が球根のように肥り(肥大した部分を「バルブ」といいます)ます。寒さは苦手で、冬の間は休眠します。毎年新たなバルブをつくるので、株が大きくなるとそれなりにスペースをとります。

スタンホペア・エコヌルタ

スタンホペア・エコヌルタ

 

ここまで読んでいただいて、「どこがおもしろいの?」と思う方もおられるでしょう。ここからが本番。スタンホペアは花の咲き方に特長があるのです。

主な開花期は夏で、株元から花芽を出しますが、その花芽、なんと下に向かって伸びます。弓なりに枝垂れる、とかではありません。潜っていくように真下に伸びます。ですから、普通の鉢植えでは育てられません。鉢底に花芽がぶつかって、伸長・開花できないからです。

真下に伸びる花芽とつぼみ(スタンホペア・ティグリナ)

真下に伸びる花芽とつぼみ(スタンホペア・ティグリナ)

 

スタンホペアは底を抜いた鉢や木枠で組んだバスケットなどに植え、吊して育てます(植え付けには水ゴケを使います)。そうすると花芽が鉢中を伸びて底面に貫通し、つぼみがふくらんで見事に花が咲きます。木枠バスケットの場合、花芽が側面から突き出てくることもあります。

底のない素焼き鉢(上)と木枠バスケット(下)

底のない素焼き鉢(上)と木枠バスケット(下)

 

こんな奇妙な性質、ふつうはわかりません。わからなければふつうに鉢植えにして、何年経っても花が咲かない理由を悶々と考えるハメになりそうです。

今ほど情報がなかった時代、園芸家の江尻光一さんはいつまで経ってもスタンホペアの花が咲かないことを疑問に思い、植え替えするとき鉢底で腐った花芽を見つけてこの性質に気づかれたそうです(このエピソードは『江尻光一のしくじり園芸日記:主婦の友社刊』に詳しく書かれています)。

スタンホペアの交配種

スタンホペアの交配種

 

花はパラシュートを広げたようなおもしろい形で、正確に伝えるのがむずかしいです。表面はロウ細工のような光沢があり、甘い香りを放ちます。花は非常に短命で、3日から5日ほどでしぼみます。

筆者の育てていたのは、スタンホペア・ティグリナという種です。水が好きな印象で、春〜秋はこまめに水をやると株が大きく育ち、自然と花が咲くといった感じでした。肥料はさほどやりませんでした。株張りは幅30cm以上に育ったので、防寒のために冬場自室に取り込んだとき、すごく場所をとって難儀したというよい思い出があります。草丈はさほどでもないのですが、葉っぱがとにかくでかいです。

スタンホペア・ティグリナ

スタンホペア・ティグリナ

 

植物園の温室で展示していることもあるので、お見かけになったらこの記事を思い出していただければ非常にうれしいです。
ヤサシイエンゲイ 小林昭二)

 

スタンホペア・ティグリナ