木は山にと思われるかもしれませんが、実は街中にもたくさんあります。例えば、街路樹や公園の樹は、一番身近に存在する樹木でしょう。当たり前すぎて、普段気に留めないことも多いですが、樹の名前を知っているとふと足を止めて見てしまうから不思議です。今回は、そんな身近にある私の好きな樹木についてお話しします。
今回紹介する樹木はカツラです。
山野の渓流近く、水の豊富な場所に好んで自生する落葉樹です。日本原産で、各地で齢を重ねた巨樹が見られます。樹高は最大30メートルを超すとされます。
シンボルツリーとして玄関脇に植えているお宅を見たこともあります。高木になるので、将来どうするのかはわかりませんが、シンボルツリーにカツラを選ぶところに、家主のこだわりのようなものを感じました。
カツラの幹はすらっと伸びて非常に行儀が良いです。樹形の美しさもカツラの魅力のひとつです。自生のカツラや公園などで大木になっているものには、株元からたくさんの幹を出して茂った「株立ち状」の木が多く見られます。株立ち状のカツラは、どっしりとした重量感のある雰囲気を持っています。
カツラの最大の魅力は「葉っぱ」にあると思います。まずはその形です。円形やハート型で、縁は波型のギザギザになります。特に芽吹いた頃の若葉はみずみずしく、特にかわいらしいです。
葉色は明るい緑色で、たくさん葉を付ける割に重さを感じさせません。なかなか特徴的な葉型で、一度覚えると忘れにくいです。
次に葉の香りです。といっても、枝に付いている葉を嗅いでも特に香りはしません。色づいてはらはらと落ちた葉っぱ。それを手にとって嗅いでみてください。焦げたような甘い香りがしませんか? その香りは『みたらし団子の香り』や『カラメルの匂い』など人によって捉え方はさまざまです。あなたはどのように感じるでしょう。ぜひ体験してみてください。落ちたばかりよりも、時間が経って乾きかけた葉っぱのほうが、より香る気がします。秋の黄葉期がベストシーズンです!
秋に街中を歩いていて、『焦げたような甘い香り』を感じたら、その近くにカツラの樹があるかもしれません。皆さんに、名前を憶えてもらえるとうれしいです。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)
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