日本全国の神社やお寺、地域などには、シンボルツリーのような扱いで、願いを叶えてくれるご神木と呼ばれる木が数多く存在しています。これは、運気、邪気、勇気、弱気、強気などの“気”と“木”を語呂合わせしているのはもちろん、実際に願いを叶える力もあるからかもしれません。特に、大樹や古木には、木霊と呼ばれる精霊のようなものが宿り、不思議な力を持つといわれています。今回はそんなご神木の中から王子神社の大イチョウをご紹介しましょう。
王子神社は、東京十社のひとつ。東京の北方守護としても知られています。この神社には、かつては「太田道灌雨宿りの椎」と伝えられる巨木があり、その巨木こそ神社のご神木として知られていたのだとか。そして、その他にも多くの樹木が茂っていたことから、あの勝海舟も修行したと伝えられています。しかし、その多くは戦災でほとんどを焼失。今では、この神社の歴史をじっと見守っているのは、東京都指定天然記念物にもなっている大イチョウだけとなってしまったそうです。
この大イチョウは、大正13年の実測によると、目通り(目の高さ)幹囲は6.36メートル、高さは19.69メートル。すでにこの地で600年以上の年月を重ねているといいます。この樹を一目見ようと最近は多くの観光客も訪れるのだという。神社の敷地内にある木々はある意味でその全てがご神木。戦前までの椎の木の威厳を今ではその威厳を受け継いでいるようにも思えました。
ちなみに、この王子神社には、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)、伊邪那美命(いざなみのみこと)、天照大御神(あまてらすおおみかみ)、速玉之男命(はやたまのおのみこと)、事解之男命(はやたまのおのかみ)の五柱が祀られ、その総称として「王子大神」と呼ばれています。徳川時代には「王子権現」の名称で江戸名所の一つにもなっていたとされています。
今でも、この神社は「運を開き、災いを除く」とされ、開運招福、運気の回生、厄除けや家内安全、身体健全、交通安全のほか、春日局が徳川三代目竹千代の健康と大成を祈願し、叶ったことから「子育大願」の神社としても知られています。
また、この王子神社の境内の中には、全国でも珍しい髪の祖神を祀る『末社関神社』もあります。この神社の御祭神は百人一首で知られているあの蝉丸公。なんでも、姉の逆髪姫のために髢(かもじ)・鬘(かずら)を作ったという伝説から、力士の髷、役者や人形の鬘などを結い上げる床山業界の信仰を集め、戦災で一度は焼失したが、昭和34年に再建。境内には毛髪報恩のための毛塚もあります。
- 『大イチョウの木』への行き方:JR 王子駅より徒歩3分
(写真・取材/グリーンアドバイザーふじえりこ)
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