オーガニックガーデニング
初めまして。フリーランスでオーガニックガーデナーをしている花 房美香と申します。今回から、まだ世の中ではあまり知られていない オーガニックガーデニングのことを、日々の仕事や暮らしを通して少 しずつお伝えできたらと思っています。
それでは、まず質問を一つ。
皆さん、ミミズはお好きですか? それも、ウジャウジャ大量に、のたくっているような……。 オーガニックガーデニングという言葉もナゾなのに、いきなりミミ ズの登場です。けれど、誤解を恐れずに言えば、オーガニックガーデニング とは、そんな大量のミミズたちが喜んで住み着いてくれるような土を 作ることなのです。そしてそんな土作りをすると、どんな世界が待っ ているのでしょうか。
紫竹ガーデンとの出会い
そもそも、私がそんな土作りに目覚めたのは今から5年前です。場 所は、北海道は帯広郊外にある観光ガーデン「紫竹(しちく)ガーデ ン」でのことでした。
それまでの私は、ベランダでプチトマトやハーブ、鉢バラを育てて いた程度。ごくごく普通の日曜ガーデナーでした。にも関わらず、あ る人生の転機とご縁のおかげで、いきなりそれまで働いていたIT業界 から足を洗って、紫竹ガーデンでガーデナー見習いを始めたのです。 東京から帯広へ。今から思えば、よくぞ移住したものだと我ながら 呆れてしまいますが。
そんな0スタートの私ですから、紫竹ガーデンでの毎日は、驚きを通り越してまさに衝撃でした。その最たるものが、草取りのたびに、ウジャウジャと土から湧き出てくるミミズたちです。のたくり、蠢(うごめ)く、親指ほどの巨大ミミズたち。あっちにもこっちにもモゾモゾと。 まさに、阿鼻叫喚の地獄絵。最初は恐る恐る眺めたものでした。
ちなみに、この『紫竹ガーデン』は、27年前に紫竹昭葉(しちく あきよ)さんという当時63歳の一人の専業主婦が、私財を投げ打っ て1万5千坪の土地を買い、木を1本1本、球根を1個1個、手で植え 作り上げてきた私設ガーデンです。そこでは開園以来一貫して、 無化学農薬、ほぼ無化学肥料で植物を育ててきました。今では来園 者数は年間10万人超。国内でも有数のオーガニックガーデンといっ てもいいでしょう。
「ミミズと菌とリリパットのお花畑と」
その紫竹ガーデンで、ミミズとともに二大衝撃だったのが、花の 巨大さ、植物の大きさでした。例えばオリエンタルポピー。 花の直径がゆうに25センチ、高さは私の背丈ほどはあったでしょうか。 どのお客様も「おっきいわねぇ」「きれい!」「北海道 だから?」などと口々に驚かれるのです。
もちろん、大きいのは他 の花たちも同様です(すべてではありませんが)。「まるで、ガリバ ー旅行記に出てくる小人のリリパット国に、ガリバーが花畑を持ち 込んだかのようだわ」。そんな空想をしながら、「なんでだろう?」 と私も思っていました。
ある日、その疑問を解いてくれたのが、現場を取り仕切る専務さん の一言。
「ウチはね、土がいいからよ(笑)」。
「え、土? あの
ミミズがいっぱいの? でもそれがなんで?」
そこからです。“ミミズ道” ともいうべき、私のオーガニックガーデナーへの道が始まったのは。 土壌微生物のことや植物生理学、有機農業の手法などなど、地道に勉 強をするようになっていきました。
植物は、太陽光を浴びると水と空気中の二酸化炭素から酸素を作り、 根からは成長のための養分として、窒素やリン、カルシウムやマグネ シウムのような無機元素を吸収して、有機物である自らを形作ってい ます。
その有機物である植物は、やがて落ち葉や枯れ枝になって土に 還ります。そしてまた、植物は上記の無機元素を土から吸い上げて成 長をするのです。
ここまではいいですね?
でもさらっと書いた「土に還ります」、ソコが肝なのです。なぜ、
土に還るのか。そこに、ミミズたち(土壌動物)がいるから。土壌微
生物たち(菌類、細菌など)がいるから、なのです。彼らが有機物を
エサとして食べて無機のフンとして土中に出す。有機物の無機化(分
解、合成)という大仕事を黙々としてくれるからこそ、生命に必要な
元素は、土、空気(大気)、海の間を途切れることなく、植物や動物
を育むものとしてぐるぐる循環していけるのです。
この続きはまた次回にお話ししますね。
(オーガニックガーデナー 花 房美香)
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