身近な花となったユリ
あっという間に12月ももう半ばです。年末の需要期に私たちが贈り物にしたり、お正月に飾ったりするためのユリ。生産者さんが今まさに懸命に育てています。
ここで一つ疑問が湧いてきます。この時期、庭や道端など、外で咲いているのは椿やパンジーなど冬の花。ユリの花は咲いていません。日本のユリの開花期は一般的には初夏から夏なんですね。でも、日本各地の生産者さんの努力と連携で、1年中ユリの花が手に入るようになりました。
では、どうやって咲かせているのでしょうか? それを知りたくて生産者さんにいろいろ教わってきました。
ユリ生産者さんの工夫
まず、ユリの生産者さんは球根会社から球根を買います。球根会社は球根を世界各地から輸入しています。オランダやニュージーランド、チリ、わずかですが国産の球根もあります。黒いコンテナに詰められた球根は、なんと冷凍されて生産者さんのもとへ届くのだそうです。
なぜ冷凍されているかって!? それは球根を休眠させるためです。休眠というのは、植物が生育に不遇な条件下にあるとき、自己防衛の機能として生育を停止する状態のことです。ユリの生産者さんは冷凍冷蔵庫にコンテナごと保管します。いつ植えるかを考えてこれを生産者さん達独自の方法で解凍して植え付けます。びっくりです!? まるで冷凍食品のようです。因みにずっと冷凍しておけるわけではなく、9か月くらいが限界のようです。解凍の仕方は生産者さんによってさまざまです。そう、企業秘密です。解凍に失敗すると芽を傷めてしまうのだそうです。
ちなみにホームセンターや園芸店で売られている球根はすぐ植えられることを想定して販売されているので冷凍されたものではないようですよ。また、ユリの球根を買う時に生産者さんが悩むのが球根の大きさです。同じ品種でも2cmごとにサイズが分かれています。基本的に大きい球根ほど花付きが良くなりますが、値段も高くなるし、通常はユリ1本に付く花の数は5、6輪が好まれるため、それ以下でもそれ以上でも値段が安くなってしまうんです。
つまり、ユリは他の植物と違って、「この花を作ろう。種を買おう」では終わりません。まず、どの品種を作るか、を決めたら、どこでいつ作られたどの大きさの球根を買うか、そして、いつ解凍していつ植え付けるか、が後の花の品質や開花期に大きな影響を与えるのです。ここが他の花と一番違うところなんですね。
皆さんがユリの花を買う時、手に取った美しいユリの背景に、生産者さんがどれだけたくさんのことを考えて植え、育てたのかをちょっとでも知ってもらえたら嬉しいです。
(高橋植物園 高橋さやか)
- 前の記事を読む(松で楽しむクリスマス&お正月)
- 次の記事を読む(年末大掃除が楽しくなるハーブスプレーの作り方)