今回は、誰もが知っているだろう「サンショウ(山椒)」を紹介します。ミカン科サンショウ属の落葉低木で、北海道から九州まで山地の林内に生えます。
サンショウは庭などにも植えられていますが、写真はすべて自生のものです。森林セラピーロードなどにも生えており、あまり陽が当らないスギやヒノキなどの森のなかでも枯れ枝や落ち葉の間などからも芽を出し少しずつ成長している姿をよく見かけます。陽当りに関係なく、たくましく生きのびる樹の一つです。
花の時期は4〜5月です。雌雄異株ですが、未だに雌花のきれいな写真が撮れません。蕾は、たぶん雄花でしょう。下の2枚は5月上旬で、上の写真の蕾より早くなっていますが、蕾の方は西日がよく当たる標高が約800mの里山であり、他方は午後から日陰になる標高約1,100mの沢沿いという条件の違いがあります。
花が終わると下の写真のように緑色の実が成長していきます。この状態を“青ザンショウ”と呼び、料理として使われることがあります。8月頃から実が赤味を帯び、9月には真っ赤に熟します。そして10月には赤い果皮の殻が割れて光沢のある黒い種が現れます)。そして晩秋になるとこの種は落下します。ですので植え付けをする場合は季節はこれからです。
森林セラピーでは、サンショウの葉の香りを嗅いでいただくことがあります。ほとんどの人は強烈な香りに反応しますが、強いストレスを持っている人や嗅覚に支障のある人などは香りを感じないことがあります。1〜2時間程度森のなかを歩いた後はそのような人でも香りを感じられるようになるので、自然の力の大きさ、凄さを知ることができます。また外国人のお客さんもサンショウの香りには直ぐに(オーバー)に反応してくれます。言葉や詳しい説明が不要なので、森林ガイド(森林セラピスト)にとっては有り難い植物の一つです。
葉と種が香辛料として使われるのはよく知られていますが、この黒い種は強烈です。試しに種を摘まんで噛み砕いたところ、数十秒間、舌というか口の中全体が痺れてしまって困った経験があります。同行者にも心配をかけてしまいました。森林セラピー体験者から「その種は食べられますか?」と聞かれることがあります。「少しなら食べても害はないけど、1分間くらい口の中が痺れるのでお薦めできません」と答えることにしています。
ちなみに、果皮は健胃薬として用いられます。正に『良薬は口に苦し』です。そのほか、花も“花ザンショウ”として食膳に出されたりします。数年前には関西のある地方在住の知人から樹皮を使った保存食をいただいたことがあります。現在は外来食を始め食文化が氾濫状態かもしれませんが、サンショウは想像以上に身近にある馴染み深い植物の一つだと痛感しました。日本人とサンショウとの関わりは縄文時代からといわれており、太古の昔から現代に至るまで私たちにとって欠くことのできない植物の一つのようです。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト 四十物 治夫)
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))