今回は、山地の渓流沿いや水気の多い岩場などに群生する「ウワバミソウ」を紹介します。イラクサ科ウワバミソウ属の多年草で、沖縄を除く日本全国に分布します。
大蛇(ウワバミ)の住みそうな所に生える草ということで、この名前がついています。別名はミズナですが、やはり水辺や湿地帯で自生する草の意味です。若葉は山菜として茎もさまざまに料理され食べられるそうですが、私は未体験です。茎の長さは30〜50cmで、写真のように斜めに立ち上がります。
葉は長さ5〜12cmの長楕円形で、よく見ると主葉脈の左右は同一ではありません。縁には粗い鋸歯(普通7、8対)がついていますが、下の写真のように鋸歯の数が多いのも散見できます。葉の表裏には疎(まば)らな毛が生えています。
花の時期は4〜9月といわれていますが、西沢渓谷内では5月中旬~8月いっぱいまで確実に見られます。ただ、花は緑白色で目立たないため見落としがちです。ついつい渓流に目を奪われてしまいますが、ゆったりと歩くことでウワバミソウを確認できると思います。
森林セラピーのお客様には水気の多い滑らかな茎や葉の鋸歯・両面の毛などの感触を楽しんでいただきますが、どうしても名前が気になるようです。名前の謂れを説明しても、『ウワバミ(大蛇)は可哀想だし、どうにもイメージが湧かない』『ミズナなら納得できる』との感想が多いです。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))