冬を彩る赤い実。この季節、庭先などでポッと赤い実が目に入ります。そこで今回はナンテンの文様をご紹介します。
ナンテンは薬にもなる
ナンテンはメギ科植物で花は6月頃に咲きます。原産地は中国で、南天燭、南天竹、南天竺などの別称知られています。ナンテンは実、根を含む全草に薬効があることが知られています。なかでも果実はナンテンジツ(南天実)と呼ばれ、鎮咳薬として喘息、百日咳などの咳止めに用いられています。
そういえば喉飴も有名ですね。また、葉は解毒や殺菌、防腐作用があることから魚毒を防ぐとされ、弁当などに添えられるのはこのためです。また最近は葉に含まれる成分に抗アレルギー薬が開発研究されているのだとか。ちなみにナンテンの花言葉は「機知に富む」「福をなす」だそうです。
語呂合わせから災難厄除けの縁起が担がれる。
その名の語呂合わせから「難を転ずる」とされるナンテンを図案化したものが、南天文(太字)です。ナンテンは平安時代に薬用、観賞用として中国から伝わり、鎌倉時代から栽培されていたことが知られています。ちなみに、戦国時代には鎧櫃(よろいびつ)と呼ばれる鎧を入れておく蓋付きの箱にナンテンの葉を収め、出陣の折りには枝を床にさし、勝利を祈ったそうです。
また、江戸時代には厄除けだけでなく火災除け、悪魔除けとしても庭先に植えらていました。今でも和風旅館などのお手洗い近くにナンテンが植えられるのは、葉が手を清めてくれるとされているからだとか。そのほか松竹梅などの鉢植えのなかでナンテンとフクジュソウを見ることがあるのは、フクジュソウと配することで「災い転じて福となす」に通じるとされているからです。
ナンテンは枕の下に葉を敷いて眠れば悪い夢を見ないという呪(まじな)いも信じられています。
ナンテンは、災難厄除、武運長久などに通じるとされています。
冬に赤い実を付けるのはナンテン以外にもある
冬に赤い実を付ける植物はナンテンだけでなく、センリョウやマンリョウもあります。実の付き方や葉の付き方でいずれも区別できます。同じような実ですが科はそれぞれ異なり、いずれも薬効はあるようですが効能は異なります。最後に、文様と植物、植物と文様は切っても切れない縁があるものです。とくに日本の文様は植物文も数多く知られていますので身近な文様を探してみてくださいね。
(藤依里子 植物文様研究家/グリーンアドバイザー)