5月に入ると畑や庭の草たちはすさまじい勢いで伸び、草刈りのプレッシャーにげんなりすることもしばしば。しかも、真っ赤な野イチゴが、誘惑してきます。毎年この時期には草刈りをしているはずが、野イチゴ狩りに夢中になってしまうのでした。
子どもは登校中、野イチゴの真っ赤な実を見つけてはパクリ。道草を食うのが、やめられないとまらない状態に。プチプチ食感がたまらなく、その味は甘くてさわやかで大変美味。
さて、この野イチゴ、調べてみると「クサイチゴ」というようです。クサイチゴという名前で“草”にしか見えませんが、“落葉小低木”つまり“木”なのだそうです。生命力が強く、毎年草刈り機で刈ってしまいますが、根が残っていれば生えてきます。
そして、絶対に茎をつかんではいけません。なぜなら、無数の鋭く小さなトゲが付いているので、園芸用の手袋などは貫通して大変痛い目にあいます。こんなにもおいしい実がいつもイノシシやサルやカラスなどの動物たちに食べられることなく残っているのは、このトゲのおかげなのでしょう。畑で植えているイチゴは、赤く色づいてきた途端に鳥につつかれたりして、ほとんど人の口に入ることはありません。
クサイチゴの実は大きさにばらつきがあり、丸々とした直径2cm以上あるものから、小ぶりで直径1cmに満たないものまであります。実の大きさは受粉の成功率の違いによるそうです。虫たちがせっせと受粉してくれて、結果おいしい実がつくということは、虫が受粉しやすい環境であることも大事なのですね。
経験的にクサイチゴの実が一番おいしくなる場所というのは、手入れの行き届いていない庭や畑の石垣や生垣の付近です。つまり、我が家の庭や畑のこと。完全に放置されて雑木林状態になっていると、ほかの高い草木に押され気味で、虫たちが快適に受粉活動できないのかあまり実が大きくなっていないのですが、完璧ではないけれど適当に草刈りがされた状態の場所だと、元気いっぱい。丸々と大きな実をつけていることが多いのです。
そんなわけで我が家の庭や畑は、草刈りをするはずがクサイチゴの実を採るのに夢中になり、草刈りが疎かになるという好循環(?)を繰り返し、毎年ジャムが作れる程度には楽しむことができます。砂糖と少量の水とで煮詰めただけのシンプルなジャムは、プチプチ食感と凝縮された味わいに酸味がほどよくきいて、とても美味しいです。