山口県萩市に移住して2回目の秋を迎える9月の始めのことです。
「ウチの月下美人が咲きそうなの。見においで」
ご近所の農家の女性にお声がけいただき、「月下美人」鑑賞会にお邪魔しました。
恥ずかしながら、「月下美人」という言葉を聞いたことはあっても、どんなものかは知りませんでした。お花であることさえもあやふやなイメージで、お酒の銘柄にありそうくらいに思っていました。
その日の21時頃お家にうかがうと、玄関には、漬け物樽の鉢に入った植物が空間を圧倒していました。「これが月下美人かぁー!」。
その圧倒的な鉢植えを見ながら奥様方がズラリと並んでおしゃべり。いくつになっても女子会は楽しい。
この月下美人は、だいたい20年くらい鉢植えで育てているそう。
育てているとはいっても、肥料をやることもなく、ほとんどほったらかし。お水もほとんど必要ないとか。
奥様方でおしゃべりに興じているその間も、ちょっとずつ花は開いていき、香りも楽しめます。
一晩の、ほんの数時間咲いた後は、こんなふうに花は閉じてしまいます。
数時間で状態が変化する様子が、まるで動物のよう。
月下美人(ゲッカビジン)は、植物学上はサボテン科に属します。
花は、夏から秋にかけてよく咲くそう。
葉っぱから花が咲いているのもおもしろい。サボテンであることがよくわかります。日本のサボテンは、唯一株から挿し木によって無性繁殖したもので、結実することはないそうです。
少しずつ形を変えていく花を見ながら過ごす女子会の横で、ご主人方はビール片手に宴会。
数時間の開花をご近所さんが集まってみんなで楽しむ、そんな時間の過ごし方が、とてもぜいたくに思えたのでした。
<参考文献>
三橋博・橋詰穹「花サボテン 孔雀サボテン・月下美人・シャコバサボテンほか」成美堂出版
(田舎暮らし イシダヨウコ)
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