[ヤマグルマ]トリモチに利用される樹|ヤマグルマ科ヤマグルマ属|エバーグリーン

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今回は、山地の急な斜面を好み、岸壁のような所にも生える「ヤマグルマ」を紹介します。ヤマグルマ科ヤマグルマ属の常緑高木で、本州(山形県南部)から四国・九州・沖縄に分布します。漢字で「山車」。別名、トリモチノキ(鳥黐木)とも呼ばれています。

春まで残る殻(3月下旬)

春まで残る殻(3月下旬)

 

ヤマグルマは陽が当たり水はけがよい少し湿り気のある急斜面を好むため、西沢渓谷でもロード沿いのあちこちで見かけますが、もっとも間近で見ることができるこの写真の場所では見過ごしていました。

ヤマグルマはどこに?(5月中旬)

ヤマグルマはどこに?(5月中旬)

 

この写真のように、雄大な景色と全体が緑に覆われているので、数年前までは気付かなかったのが正直なところです。写真の右下隅に花が見られますが、気がつかれましたか? 秋は全山が紅葉・黄葉するので、やはりそちらに目が行ってしまいます。

周りの落葉樹の葉がすっかり落ち、山も冬枯れ状態になっていた春先に気付いたのが褐色で目立つ殻でした。ここのヤマグルマ発見後は、森林セラピーの体験者や同行する友人などには必ずここで紹介することにしています。

殻(3月下旬)

殻(3月下旬)

 

花期は5〜6月ですが、この場所は6月下旬には果実が確認できます。10月になると果実は褐色に熟します。その後、硬くなった殻が裂けて種が落下しますが、殻は春になって新しい花芽が開く頃まで残っています。

五分咲き(5月上旬)

五分咲き(5月上旬)

五分咲き(5月上旬)

五分咲き(5月上旬)

八分咲き(5月中旬)

八分咲き(5月中旬)

 

ヤマグルマは主に暖地に生える常緑樹であるがゆえなのか、表面は光沢のある深緑色をしており裏面は光沢の無い淡緑色ですが、写真でもわかるように厚みのある革質で無毛です。どのような断熱対策を持つのかはわかりません。寒冷地の常緑樹の葉全体が毛で覆われているのとは、まったく様相が違います。

成長する果実(6月下旬)

成長する果実(6月下旬)

色づき始めた果実(9月上旬)

色づき始めた果実(9月上旬)

 

落葉した晩秋から早春まで、ロード沿いの常緑樹は森林セラピーにとって貴重な対象物となります。ロード沿い手の届く場所にあるヤマグルマもその一つです。ほかの常緑広葉樹の葉とは手触りがまったく違うことに体験者は驚きを隠せません。ここのヤマグルマは葉や枝には触れられますが、花や果実にはお目にかかったことがありませんので、もし機会が訪れるなら花の香りや果実などの手触りを確かめたいと思っています。一方、写真の場所は急斜面で滑落の危険性があり、残念ながら手が届きません。

名前の謂れは、みなさん推測されたとおりです。ヤマグルマは枝先に葉が車状に輪生することから、樹皮を水に浸ししみ出した粘質物をトリモチとして利用したことによります。

 

山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))


 

色づき始めた果実(9月上旬)