街は歩いてみないと出会いはない
最近、街歩きに少しだけハマっている筆者。口承文芸学研究者で文筆家の米屋陽一氏の案内で品川地区を歩くことになりました。そして出合ったのは、はじめて目にする珍しいご神木でした。
はじめて遭遇した神木・ケンポナシは品川区指定天然記念物
ケンポナシってナシの木? おいしいナシが実っているの? と名前から想像。しかし、ナシとはまったく違う木だと判明。ケンポナシはクロウメモドキ科に属する落葉樹の高木でした。ちなみに、バラ目クロウメモドキ科に属する植物でよく知られているものにナツメがあります。ケンポナシは、夏に淡い黄色の小さい花を咲かせ球形の実が成ります。9月から10月に紫黒色(しこくしょく)に熟し、甘味があって食べられるのだとか! これは食べてみたいと心密やかに思うのは筆者だけでしょうか。
さて、そんなケンポナシ。大きさは本樹の幹囲りは約2.5m、高さは18mあり、推定の樹齢は250年~300年。幹は二本立でしたが右側が枯れてなくなり、現在は一本立になったとされています。そして、このケンポナシは都区内ではほとんど見ることができない木でとても貴重ということで、昭和53年に品川区の天然記念物(第15号)に指定されています。
ケンポナシには、ニホンミツバチが暮している
このご神木・ケンポナシの根元の洞(うろ)に、日本在来種であるニホンミツバチが巣を作っています。木の洞に巣を作ることは、木にとってはハチミツの抗菌作用が腐朽菌などから守ってくれるから問題はないのだとか。このニホンミツバチもとは本殿に棲みついていたものがお引越ししケンポナシを住処にしたのだとか。ニホンミツバチは近年その数が減少し、希少性の高い種のひとつになっているのだそうです。
ニホンミツバチはおとなしくめったに人を刺すことはありませんが、身の危険を感じた場合は命と引き換えに攻撃をしてくることもあるのでハチがいるときは近づかないように注意を。
戸越八幡神社とは
室町時代の大永六年(1526)の御創建と言い伝えられている神社です。江戸時代・安政二年(1855)に落成した総欅造りの御社殿は都内に現存する珍しい木造の建物のひとつ。社殿の天井には、土光洋子さんによる美しい天井画を見ることもできます。また、年間を通して趣向を凝らしたな御朱印を楽しむこともできます。
この戸越八幡神社、震災時にはかつてのご神木が社殿を守ったことでも知られています。今では境内の片隅でひっそりと焼けた切株が残されているだけですが……。
- 『戸越八幡神社』:東京都品川区戸越2-6-23
(園芸文化協会会員・グリーンアドバイザー 藤依里子)