亜高山帯の広葉樹林や高山帯のハイマツ林の縁に自生する「ヒメイチゲ」を紹介します。キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、本州(近畿地方以北)から北海道に分布します。
山梨県内でヒメイチゲに出合える場所は、積雪が多いという共通点があります。花期は5〜6月といわれていますが、最初に出合ったのは、6月の金峰山だったと記憶しています。比較的アップダウンの少ない針葉樹主体の稜線道で、小さく可憐な花が印象的でした。大菩薩嶺でも、なだらかな混交林の道端にありました。「春を待ちわびて、可憐な花が咲いたなあ!」という感じであまり印象に残ってはいませんでした。
5〜6年前になりますが、鋸岳の垂直に近い斜面で見かけた際は「何で、こんなところに?」と驚きました。森林限界に近い場所で、ハイマツや低い広葉樹もあるにはありますがほぼ岩山です。岩の割れ目や隙間に溜まったわずかな土で懸命に命を繋いでいるのがわかります(マイヅルソウの葉も見えますが、霧の多いことも幸いしている?)このときこの花にパワーを貰ったこともあり、翌年から春山では「ヒメイチゲ」を探すようにしています。
昨年の春、西沢渓谷でもヒメイチゲが生息しているのを見つけました。今年も同じ場所・時期に咲いていましたので来年以降も楽しみです。広葉樹の多い比較的日当たりのよい森縁の急斜面で、湿気は多いですが水捌けは良い場所です。標高は1,000m前後ですが、亜高山帯と同じ気象条件なのでしょうか? 何度も通ったところですが、10年近くも気付かなかったことになります。たまたま膝に不安のあった知人と普段よりもゆっくり歩いていて、「何か違う香りがする」と言われたことがきっかけでヒメイチゲに出合えました。これからもできるだけゆったり歩くことで、新しい発見が期待できそうです。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))