願いを叶えてくれたり、パワーをくれるとされているご神木。しかし、ご神木の考え方は津々浦々で、神社によっては境内の木々はすべてご神木とされているところも少なくないようです。そんなご神木を探し国内外問わず旅をしていると、神社名に植物の名前が入っている神社に出くわします。そこで、今回は名古屋より神社の名前が植物名といった神社をご紹介しましょう。
椿神明社(つばきしんめいしゃ)
所在地:名古屋市中村区則武2-4-10
はじめは名前に椿(ツバキ)が織り込まれている神社です。こちらの神社は名古屋駅から徒歩5分ほど。名古屋の人からは駅裏、駅西と呼ばれている場所にありました。この地域は空襲でも焼け残ったとされる場所で、古い神社をいくつか見ることができます。
この神社のある場所は、その昔牧野村と呼ばれ、椿社、厳島社、天王社、稲穂社、神明社の5つの神社があったとされています。そしてこの名のゆかりは、かつてツバキの大木が何本もあり、ツバキの森とも呼ばれていた場所だったからだとされています。
また、この神社に残るもうひとつのエピソードがフジのお話。
これは、その昔境内近くの笈瀬川(おいせがわ・御伊勢川とも表記)の川辺にフジの大樹があり、毎年すばらしい花を咲かせ見物人が集まるようになったのですが、人が集まったことで畑が荒らされることに困った村人は、そのフジの大樹を切ってしまいました。すると、その年、その村では悪疫蔓延し……。思い悩んだ村人が賢者に問うたところ「これは伐樹の祟なり。家毎に酒を醸して神に献ずべし」と言われたが、酒を造るのが難しいので、代わりに笈瀬川の清き流水を用いて甘酒を造り献上することにしたのだそうです。
そしてその残りの甘酒を病人に与えたところ、病が癒えたことから、毎年、旧暦9月15日(現在の10月15日)に笈瀬川の水で醸した甘酒を用意し、牧野神明社と椿神明社、厳島社、須佐之男社、稲穂社の牧野五社に献上して安全等を祈る祭りとして「甘酒祭り」が行われているのです。
もちろん、現在境内にはフジの大樹もツバキの森も見ることはできませんが、そんな過去を偲ぶことで心のなかでフジやツバキの美しい姿を感じることができる場所でした。
大松稲荷社(おおまついなりしゃ)
所在地:愛知県名古屋市中村区則武2丁目17
こちらは、水野社(みずのしゃ)の境内にあります。この水野社は、祓戸大神(はらえどのおおかみ)を祀るという珍しい神社のひとつ。祓戸大神とは、禍事(まがごと)、罪、穢(けが)れを祓う瀬織津比売(せおりつひめ)、速開都比売(はやあきつひめ)、気吹戸主(いぶきどぬし)、速佐須良比売(はやさすらひめ)の総称で、祓戸四柱大神とされています。
その境内の中にある大松稲荷社には、その名のあらわす樹齢600年にも及ぶ大きな松があったとされ、現在では「大松の跡」の碑が残るだけでした。今はもう姿を見ることはできませんが、その松の「気」だけは漂っているようにも思えました。
今回は名古屋から植物の名が付けられている神社を紹介しました。余談になりますが、やはり大きな松があった場所に建てられた神社は同様の名前が付けられるのか、港区南青山(東京)にも同名の神社があります。今年は植物にゆかりの名を持つ神社を巡ってみてはいかがでしょうか。
(写真・取材/グリーンアドバイザー・開運文様研究家 ふじえりこ)