俗に「ひっつき虫」とか「くっつき虫」と呼ばれる植物の種子があります。野原などを歩いていると、知らず知らずに衣服にくっつくアレです。植物が種子を遠くに運ぶための知恵ですが、くっつけられるほうからするとなんの得もありません。友だちの背中に投げつけたりして遊ぶくらいでしょうか?
今回紹介するコセンダングサも「ひっつき虫」の種子を持ちます。夏の終わりから冬の初め頃まで、空き地や畑、道端などでごく普通に見かけるザッソウです。ふるさとは熱帯アメリカで、日本には江戸時代に入ってきたとされます。現在では日本の大地に根付いて、北海道を除く日本全国に帰化しているようです。
近い仲間(センダングサ属)に「コバノセンダングサ」や「センダングサ」などがあります。これらは似たような姿で同じような場所や季節に生えるので、個人的には見分けづらく感じます。
花は明るい黄色で丸っこく、そして地味です。ひまわりの花びらをすべて引っこ抜いて、タネのできる真ん中の部分だけを残した……そんな感じです。ちなみにヒマワリの花びら部分は舌状花、真ん中の地味な部分を筒状花といい、それらがたくさん集まっていわゆる一輪のヒマワリをかたち作ります。
コセンダングサもヒマワリと同じキク科で、花のつくりも基本的に同じです。今までの説明をコセンダングサに当てはめてみると、舌状花を持たず筒状花がたくさん集まって一輪の花がかたち作られている、となります。
さて、いよいよひっつき虫の話です。花後にできた種子の束は熟すと黒っぽくなり、大きく手を広げるかのごとく球状に広がり、動物を待ち構えます。
ここからはルーペの出番です。種子の先端には針のようなトゲ状の冠毛が3~4本、広がるように生えています。冠毛を観察すると表面に半透明の細かいトゲが下向きに生えており、この細かいトゲが衣服などに引っかかり、ひっつき虫になるのです。
よくよく観察して見ると、種子本体(そう果)の冠毛に近い箇所にも細かいトゲが生えています。しかも冠毛のトゲとは逆向きに生えています。動物にくっついた後、簡単に離れないための工夫でしょうか?
今回はコセンダングサを通じて「ひっつき虫」を紹介しました。近所の河原や畑地を歩くと知らないうちにくっついているひっつき虫の種子。邪魔者扱いせず、好意的に観察すると、おもしろい発見があるかもしれませんよ。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)