花好きには「あこがれの職業」ともいえる花農家。
その現実はどんなものなのか、山口県萩市の福栄にIターンしてご夫婦で花農家と花屋を営む「のんの花園」の野村綾子さんに、お話を伺ってきました。
花農家になった意外な理由
もともと「お花が好き!」というよりも「花より団子」だった綾子さん。ご夫婦で農家の経営を戦略的に考えた結果が、花農家でした。
Iターンで広い土地を持っていなかった野村さんにとって、花は狭い土地で集約栽培でき、個人で勝負できる作目(さくもく)ということで最適でした。
もともと、この地域は白菜の産地。しかし専業農家はおらず、ほとんどが兼業農家でした。白菜は運ぶのも重く重労働なのに比べ、ビニールハウスでの花の栽培は女性にも比較的やりやすい作業です。
花農家のビニールハウスの中は?
さっそくビニールハウスの中へ入ると、チューリップがぎっしり。しかし、イメージしていた花園とはちょっと違います。その理由は、全部つぼみ!
そもそも花が開いてしまったら出荷できないから、花農家にとっては花が開いた状態のビニールハウスは、損失を抱えてしまって恥ずかしいことなんだそう。つぼみができたら全部刈って出荷するのが、あるべき農家のスタイルです。
ビニールハウスの設備
温度は凍らない程度に加温調整しています。
開け閉めや加温はすべて手動で行い、暑くなりすぎないよう注意しているそう。
最近はAIを駆使した植物工場のような設備をもったものもあるようですが、ごくごく普通のアナログなビニールハウスでも、建物、冷蔵庫と設備には100万円単位の資金がかかります。野村さんのように個人がIターンで農業を始める場合は、後継者がおらず引退する農家の設備などを譲り受けたりして始めるのが現実的だそうです。
移住してそういった農家の現実を知ってみると、大都市圏から遠く離れた地域で農業を生業に生きていくのは簡単なことではないと感じました。実際、農業をしている人の多くが年金生活者だったり、平日はお勤めをする週末農家だったりする場合がほとんどで、若い世代で専業農家という人はそう多くはありません。野村さんのようにIターンで専業農家としてやっていけるのはかなりすごいことなのです。
次回は野村さんから教わったちょっと変わったチューリップについてご紹介します。お楽しみに!
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