今回は西沢渓谷でも人気の野草「イワウチワ」を紹介します。
イワウメ科イワウチワ属で、山の北尾根など日陰の岩場に生えることが多い常緑の多年草です。 岩場に生えることと葉っぱの形が団扇(うちわ)に似ているのがゆえんと言われています。
4月上旬〜5月上旬、葉の間から長さ5〜15cmのほとんど垂直に立つ紅色の花茎の先に淡紅色の花が一輪だけ咲きます。花冠は直径が2.5〜3cmの鐘形または漏斗(ろうと)形で、5つに深く裂けています。雄蕊(おしべ)は5本で、底部には仮雄蕊も5本あります。写真のように、萼(がく)も5つの萼片から成っています。
東北地方南部から中国地方東部に分布していますが、地域によって花や葉っぱの形や花茎の色などが少しづつ異なります。
「イワウチワ」は葉っぱに特徴があるので、花の終った時期でも確認できます。広円形で長さ1.8〜3.5cm、幅2〜4cmと幅広で基部は心円形です。波状の鈍い鋸歯(きょし)を持ち、厚い葉質で光沢もあります。
東北地方のものは長さ幅とも4〜8cmの大きな円形で(基部はハート形)「オオイワウチワ」、北陸から近畿地方にかけては、葉が広楕円形で基部が円形又はくさび形になるので「トクカワソウ」と呼ばれています。
西沢渓谷沿いの地元の人でもこの「イワウチワ」が見られることを知っている人が少ないので、よほど注意深く探さないと見つからないでしょう。渓流側の急斜面や反対側の岩の上など、思いがけない場所にひっそりと咲いているからです。「この可憐な花を見つけた時の感動が忘れられない!」と、毎年来られるマニアの方もおられます。
コ-スには稜線沿いの道はありませんが、足元や目の高さの斜面に生えています。ついつい滝のセセラギや周りの景色に目を奪われてしまうので気がつきにくいです。自分のペ-スでゆったり時間をかけて歩くことでこの「イワウチワ」に出あえると思います。ぜひトライしてください。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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