日本全国の神社やお寺、地域によってはシンボルツリーのような扱いで、願いを叶えてくれるご神木と呼ばれる木が数多く存在しています。これは、運気、邪気、勇気、弱気、強気などの“気”と“木”を語呂合わせしているのはもちろん、実際に願いを叶える力もあるからでしょう。特に、大樹や古木には、木霊と呼ばれる精霊のようなものが宿り、不思議な力を持つといわれています。
さて、今回ご紹介するご神木は『エボ取りの木』と呼ばれている不思議な木です。
木がある場所は、はだか祭で有名な千葉県いすみ市大原。十二所権現、田中権現と呼ばれている場所にありました。木の幹には、しっかり注連縄も巻かれています。
しかし、この木のいわれについて知る人になかなか出会えません。ようやくたどり着いた役所の方が「いすみ市大原地区には、なぜかエボ(イボ)取り関係の寺社がかなりの数で点在しているということ、さらに、十二所権現はイボ取りだけではなく、安産の神様でもあるということ」を教えてくださいました。
『ふるさと外房の大原(千秋社)』によると、「妊婦のいる家庭では、この権現堂の神前に灯されている短いローソクを持ち帰り自宅の神棚に備えるとお産が軽くすむ」とありました。持ち帰るローソクは短ければ短いほどお産が軽いのだそうです。しかし、この権現堂は祭りがある日しか御開帳になってはいないようです。今では町中にある権現堂は、数十年前にはお社の周囲は広い水田に囲まれ文字通り田の中の権現様「田中の権現様」だったようです。
そんな場所にあるこのご神木「エボ取りの木」。やっぱり木だけに気になります。知り合いの写真家さんに伺ったところ「たぶんだけど……、タブノキではないか」とのこと。とすると、クスノキ科でなんとあのアボカドと近いお友達。その実も食べることができるはず。
タブノキだと仮定しつつ、なぜイボ取りなのか……と調べに調べてわかったのは、三重県鈴鹿市のふるさと納税サイトに、タブノキから抽出した、タブノキエキスを抗炎症剤として特許を取得したという化粧品があるではないですか。ということは、「エボ取りの木」がタブノキだとすると、皮膚に役立つ成分を持つことから、イボとも関係したのではないかという結論に。
そして、さらにこの権現堂と関連するか否かは不明ですが、なんと品川には江戸元禄の頃に、上総の国(千葉県)大原からこの地に運ばれ祀られたイボ取りと安産の神様で知られる大原不動尊もあるとのこと。このイボ取りと安産の組み合わせから、この権現堂ともしかしたらつながりがあるのではと推測したのです。空に大きくそびえる、このご神木の「エボ取りの木」を仰ぎ見ながら、時間があったら大原不動様を訪ねてみようかと思いました。
- 『いすみ市大原のえぼ取りの木』への行き方:外房線 大原駅 下車10分
(写真・取材/グリーンアドバイザー ふじえりこ)
- 前の記事を読む(咲いた、咲いた。今年も咲いた♪)
- 次の記事を読む(いつもの飲み物を一味変える、ハーブの力)