今回は、丘陵帯から山地帯に生える「クサギ」を紹介します。
シソ科クサギ属の落葉低木で、北海道から沖縄までの日本全国に分布します。
伐採の後や崩壊した後の斜面などに最初に姿を現すのが、この「クサギ」です。葉や枝を揉むと独特の匂いがすることから“臭木(クサギ)”の名前がついていますが、花は芳香があり、蝶などが好んで群がります。新芽や若葉は山菜として食され、核果や萼は染料に使われる利用価値の多い樹木の一つです。
花期は8~9月ですが、花が終ると5枚目の写真のように紫青色に熟した核果と鮮やかな赤色の萼が反り返るようになります。その後、黄葉した葉っぱが落ち、熟した核果も落ちます(6枚目の写真)。最後は木枯らしに吹かれて、7枚目の写真のように柄の付いた萼が落下します。そして、無事に越冬すれば来春にはまた新しい芽が吹き出します。
1枚目と3枚目の写真のように開花時の萼は淡い赤色をしていますが、秋に実(核果)が熟す頃は鮮やかな赤色になり、そして葉が散って核果が落ちた後も赤い萼が残るので、すごく目立ちます。名前が気の毒に思えるクサギですが、暑い8月から初冬まで存在感のある樹です。花・葉・枝の香りを楽しめるのはもちろん、細毛のある葉や核果・萼・柄の手触りも独特なことから、森林セラピーにも大いに役立っています。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))