今回は筆者の地元である東京都北区より紹介します。と、書きながら、実は今回紹介する王子稲荷神社は先日紹介した王子神社内にあるものだと、北区に三十年以上暮らし疑うことなく過ごしてきた筆者でしたが……。
王子稲荷神社のクス
王子稲荷は王子神社から徒歩10分ほどの場所にありました。あまりに立派な建物で、北区にこんな場所があったのかと思ったほどでした。まずはご神木、ということで神社の方にうかがったところ、とても大きなクスノキを指差して「ご神木はこの木です」と教えてくださいました。かなりの巨木でした。しかしながら、このご神木には特に「謂(いわ)れ」というものはなく、境内の中で一番立派な木ということでご神木とされているそうです。
王子稲荷神社はこんな場所
王子稲荷神社……どこかで聞いたことがある。そう思った方はお稲荷さんに詳しい方かも知れませんね。というのも、この王子稲荷神社は征夷大将軍・源頼義により「関東稲荷総司」の称号を頂き、小田原北条氏、徳川将軍家代々の祈願所とされていた場所なのだとか。
ちなみに、関東三大稲荷は関東地方にある主要な三つの稲荷神社の総称で、笠間稲荷神社(茨城県笠間市)、装束稲荷神社(東京都北区)、そして白笹稲荷神社(神奈川県秦野市)で、この王子稲荷神社は関東稲荷総司でありながら入っていない……とはいえ、機会があればご紹介したいと思いますが、装束稲荷神社(東京都北区)はもともと王子稲荷神社の摂社だったのでなぜといった疑問が残されました。
王子稲荷神社の楽しみ
この王子稲荷ですが、落語「王子の狐」の舞台としても知られています。
内容は、とある原で狐が若い娘に化けるのを見た男。「騙されるのは俺❓」ということで狐が化けた娘に男は声をかけ料亭に。そしてたらふく飲み食いして、娘が酒で酔い潰れたのを見て男はドロン。支払いを催促された娘は狐の姿で逃げ帰る。そこに店の主人が戻り、ことの顛末を聞いて、「こりゃお稲荷様になんてことをした。詫びにいかねば」とぼた餅を持って狐を尋ねるが狐はそのぼた餅を見て「ありゃ、これは馬糞じゃないのかい。人間とは執念深いもの」と言った、というもの。
また、浮世絵師歌川広重は「王子装束ゑの木大晦日の狐火」として、稲荷の使いである狐たちが諸国から、王子に集まり王子稲荷に初もうでをする様子を描いたものもあります。境内の奥には、今でもかつて狐が棲んでいたとされる「狐穴」もありました。
お祭りも知られています
江戸は幾度となく大火に見舞われた場所。毎年2月の午の日に開かれる凧市。これは「凧は風を切る」として火事除けの縁起が担がれているのだとか。また、国認定重要美術品の「額面著色鬼女図」、谷文晁の龍図などもあります。ただし、境内に保育園がありセキュリティーの関係からか表門が開くのは保育園がクローズしてるときだけとなります。
所在地:東京都北区岸町1-12-26
外出するにも逡巡してしまう毎日ですが、どこかへ行くなら、できるだけ空いている時間に電車かマイカーを使っての寺社巡りなどはオススメです。
- 『王子稲荷神社』:東京都北区岸町1-12-26
(グリーンアドバイザー、開運植物文様研究家 藤依里子)