今回は「サンザシ」を紹介します。バラ科サンザシ属の落葉低木または小高木で江戸時代に中国から薬用として移入され、日本では庭園などに植えられました。山梨市でも里山やフルーツパークなどで見られます。
写真でおわかりいただけますように、サンザシの葉は広倒卵形で先は急にとがっており、基部はくさび形をしています。長さ3~7cm、幅2~4cmで葉身の上部で3つから5つに裂けます。縁は不揃いの歯牙または欠刻があります。花期は4~5月ですが、山梨市内の小高い丘では5月上旬から咲き始めます。白色で径は約1.5~2cmです。果実(偽果)はほぼ球形で直径3~4cmになり、初秋には赤く熟します。
私たちが行っている森林セラピーでは、サンザシの花の香りを嗅いでいただきます。熟した果実(偽果)は食用となるので、希望される方には食べていただくこともあります。この果実を乾燥したものが山楂子として、漢方で健胃・消化・整腸・駆瘀血(くおけつ)薬として消化不良・食欲不振・胃酸欠乏症・下痢・赤痢・月経痛・産後疼痛などに用いられています。また、持続性の血管拡張作用があり、血圧を下げ血行を良くするといわれています。
民間では、肉を煮るときにサンザシの実を数個入れると柔らかくなる、魚毒が消される、果汁が二日酔いに効くなどともいわれています(『原色 和漢薬図鑑』(株)保育社より)。
サンザシは日本国内で薬用として生産されてはいないようです。中国料理で食後に出ることがある砂糖漬けのサンザシは、この実です。日本では知らない人がほとんどです。健康意識の高い人は、「ああ!血液をサラサラにしてくれるサンザシですね!」と反応してくれ、酸っぱい実にかぶりついてくれます。その感想は「美味しいとは言えないけど健康には良さそう」とのことでした。
また、若枝や葉の出始めは軟毛が生え(そのうちに消えてしまい)ますので、触感も楽しめる樹です。ただし短い枝は刺状になりますので、触れる場合はどうぞ慎重に。
(山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))
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