その植物にはじめて出合ったのはとある植物園の薬草コーナーでした。目に鮮やかな黄色い花、手前のネームプレートにはカタカナで「クサノオウ」。すごく効き目がある薬草で、草のなかの草→草の王様→「草の王」ということなのかな?なんとも堂々とした名前だなぁ、と感心しました。
名前の由来は諸説あり、「草の黄(おう)」や「瘡(くさ)の王」などの漢字を当てることもあります。草の王も諸説の一つとしてあり、理由はおおむね前述の通りです。
茎や葉を切ると、切り口からぷつぷつと赤みが混じったオレンジ色の汁がしみ出てきます。「草の黄」はこの汁の色が由来です。インパクトのある毒々しい色で、どろりとしているので触れるのは敬遠してしまいます。実際に毒性があり、かぶれる恐れがあるので触らないほうが無難です。手や服につくと落ちにくいのもやっかいです。
「瘡の王」の「瘡」は皮膚のできもの、腫れものという意味があり、皮膚病に効果があるために出てきた説です。正しく使えば毒も薬になるということでしょうが、素人が手を出して良いものではありません。
ここからはどんな植物なのか見ていきましょう。薬草園に植えられているだけに貴重な植物なのかと思っていました。しかし、あるとき山間部の路傍にたくさん生えているのを見かけ認識を改めました。気づいていなかっただけで、あんがい身近なザッソウだったのだと。
花の時期は主に初夏で5月頃です。草地や道端などに生えていますが、郊外の自然が多い場所で見かけることが多く街中で見たことはありません(個人の印象です)。
高さは50cmほどに生長します。葉裏や葉柄、茎やつぼみに白い毛がたくさん生えるので、光の当たり具合によっては全体的に白っぽく見えることもあります。花は黄色で花びらは4枚、中心に緑色の雌しべが棒状にそびえ立ちそれを囲むようにたくさんの雄しべがつきます。雌しべは微妙にくねくね曲がったものが多いです。タネはたくさん作りますが、発芽しない未熟なものがたくさんできます。
黄色で花びらが4枚というとアブラナ科の植物と勘違いしそうですが、クサノオウはケシ科です。雌しべを見ると明らかに違うことがわかります。丸みのある深く切れ込んだ葉っぱはなかなかかわいらしいです。前述したとおり、茎葉の切り口からでる汁には毒性があるので、観察する際は気をつけてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)