ハコベはごく当たり前に身近な場所で見られるザッソウです。空き地や街路樹の下、道端や畑や庭にまではびこります。個人的には「小鳥のえさ」のイメージが強いですが、人間も食べることができます。春の七草「はこべら」はハコベのことです。
一般的に、ハコベ(以下、ミドリハコベ)とコハコベの2種を区別せず「ハコベ」と呼ぶことが多いです。コハコベはミドリハコベと比較して全体的にやや小型なのでこの名前があります。
両者はそっくりで、恥ずかしながら筆者はパッと見で区別する自信がありません。大きいとか小さいとかあいまいなやり方で判断するのは困難です。図鑑によると、コハコベは「茎が紫色を帯びる」という特長があるので、迷ったときはそれを基準として判断しています( かなり乱暴 )。
筆者が今まで観察してきた範囲で気づいた両者の違いを2点述べます。ミドリハコベに比べてコハコベのほうが明らかに雄しべの数が少ないように感じます。ミドリハコベの雄しべが7本以上あるのに対して、コハコベは2~4本ほどしかありません。もう一点は株姿の違いです。ミドリハコベは茎の先端のほうが立ち上がって斜上し、コハコベは地面を這うように伸びます。あいまいですが、これも判断基準のひとつになりそうです。
先に両者の違いを述べましたので、ここからは共通した見どころをお話しします。まずは花について。花は径7mmほどの白色で繊細な雰囲気があります。
一番の注目ポイントは花びらの枚数です。花の画像を見て花びらの枚数を数えてみてください。10枚あるように見えませんか? しかし、実際の枚数は5枚です。どういうことかというと、1枚の花びらがつけ根で二つに分かれてウサギの耳のような形になっています。だから、5枚の倍、10枚あるように見えるワケです。
大きくするより細かく分けたら材料が少なく済んでしかも量が増えて見える、ということでしょうか? わかりませんが、なにか知恵や工夫のようなものを感じます。とにかく、このウサミミ型の花びらは愛らしいので、ルーペ必携で観察してほしいです。
花に関する見どころをもうひとつ。花びらの下につく5枚の萼片が星形になっていてかわいらしいです。見逃しがちなポイントなので一度確認してみてください。学名のStellariaは「星形の」という意味でこの萼片の姿に由来します。
さいごに気になることをひとつ。ハコベの茎には毛が生えるのですが、なぜか片側だけに並んで生えます。何か意味があるのでしょうか?
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)