渋谷区の真ん中を流れる渋谷川のカワヅザクラが2月中旬で満開になりました。今年は暖冬で、外花壇に植えた春の花たちもどんどん開花しています。ならば、寒いよりは断然暖かいほうがいいから冬なんて来ないほうがいいと思われるかもしれませんが、日本の自然環境にとって冬の寒さは必要不可欠なものです。この寒さがないと春に開花する樹木の多くは蕾が開花する準備を始めません。その代表格が我々日本人が愛してやまないサクラです。
サクラはすでに前年の夏に蕾の元となる花芽を作りだします。夏にはどんどん青葉から栄養を作り、樹木の体内に貯蔵して秋を迎えます。そして秋から冬に落葉し休眠します。冬に一定期間低温にあたることで花芽は眠りから覚めて開花の準備を始めます。これを、休眠打破といいます。そして春に気温が上昇すると花芽が一気に成長をし、ついに開花に至るのです。サクラは四季があってこその花なのです。
一般的なサクラの品種であるソメイヨシノは、3月後半に開花し始めますが、日本には野生種や園芸種を合わせると約600種類ものサクラが存在するといわれています。なかには冒頭で紹介したカワヅザクラなどの早咲きの品種もあります。カワヅザクラの開花時期は2月上旬。ソメイヨシノよりも花色が濃く、桃色から淡紅色の花を咲かせます。カワヅザクラよりもさらに早咲きのサクラにアタミザクラ(開花期1月下旬から2月中旬)があります。ソメイヨシノは見頃の期間が1~2週間と短いですが、カワヅザクラやアタミザクラは見頃の期間が長く1か月くらい咲き続けるので、お花見好きにはうってつけの品種です。
サクラには寒さが必要、ということは一年中温暖な沖縄ではサクラのお花見はできないの? と心配された方、ご安心ください。沖縄にはカンヒザクラというサクラの原種の一つが野生化して分布しています。旧暦の正月の頃に釣り鐘状の花が咲き、沖縄ではサクラの開花情報といえばカンヒザクラのことをさします。
ソメイヨシノでお花見する前に早咲きのサクラでもお花見を楽しんで、暖かくなるのを待ちましょう。