散歩をしていて、歩道に目をやるとすき間から生えているザッソウ、街路樹の株元を見ると明らかに誰かが植えたのであろう草花、「なぜこんな場所に生えているのだろう?」などと考えていると更に楽しくなり、そんなふうに植物を観察するだけで飽きません。その楽しい散歩中よく見かけるものに「朧月(オボロヅキ)」という多肉植物があります。
やや先端のとがった肉厚の葉っぱが、花が咲いたように丸くつきます。その株姿は多肉植物としてはポピュラーな「エケベリア」に似ています。葉色はグレーっぽい緑色で、表面は白い粉がうっすらと付きます。言葉では伝えにくい、ぼんやりとした葉色ですが『朧月』の名前は、そんなところに由来するのかもしれません(みなさんは何色だと感じますか?)。寒さに強く、筆者の住んでいる京都市近郊では冬でも屋外で元気に育っています。寒くなってくるとピンク色に紅葉して、ほかの季節とはまた違ったかわいらしさを見せてくれます。
民家の外壁沿いに置いているプランターや発泡スチロール箱の中で茂っているシーンが一番多く見かける気がします。そんな妙に生活感のあふれる場所に似合います。エアコン室外機の下のちょっとしたすき間や、コンクリートブロックの穴から生えているものを見たことがあります。昔から日本にあったような、郷愁を誘う雰囲気もあります(個人の感想です)。
実際はメキシコあたりが原産で、日本には昭和初期に入ってきたようです。渡来したのが80年〜90年くらい前ですから、昔から日本にあったという感は、あながち間違っていない気もします。
とても強健な植物で、あまり場所を選ばずに育ちます。一言で言うと「太陽の下、ちょっとの地面があればいい」といった感じです。日当たりは非常に大切で、日当たりの悪い場所ではひょろひょろとした姿になります。生長してくると茎は這うように伸びていき、葉の付いた茎頂部分だけ上を向きます。
朧月は葉っぱがポロリと脱落しやすく、落ちた葉っぱは地面の上で芽と根を出して新たな株になります。茎からも子株がよくでてくるので、環境が合って一か所で生長し続けると、ちょっとした集落(?)ができます。集落状態になったものは存在感があり、ぼーっと散歩していても目に止まります。
園芸店でも苗が出回っていますので、興味のある方はぜひ育ててみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)