[ウツボグサ]夏を告げる野草のひとつ|シソ科ウツボグサ属|エバーグリーン

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今回は、里山や山地などの日当たりの良い草地に群生する「ウツボグサ」を紹介します。シソ科ウツボグサ属の多年草で、沖縄を除く日本全国に分布します。国外では、東アジアから極東ロシアに分布するといわれています。漢字では“靫草”と書きます。弓矢を入れる靫(うつぼ)に似ていることからこの名がついたとされています。別名は、カコソウ(夏枯草)です。

群生するウツボグサ:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)

群生するウツボグサ:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)

 

上の写真のように花の頂部が茶色になって枯れたように見えますが、これが夏枯草の謂れです。花が終わると穂全体が茶色になります。下の写真の周辺では群生は見られませんが、この場所はたまたま雨などで土砂が流されやすい地形のようでした。

ひっそりと咲くウツボグサ:八ヶ岳南部(7月中旬)

ひっそりと咲くウツボグサ:八ヶ岳南部(7月中旬)

 

花期は6〜8月ですが、標高800m前後の山梨市内の里山にある森林セラピーロード“巨峰の丘ロード”沿いでは、6月下旬から咲きだし7月中旬には紫色の花は終り茶色が目立ち始めます。掲載の写真4枚は、撮影場所は異なりますが、すべて標高1,500〜1,700mで撮ったものです。花の色は濃い紫色がほとんどですが、紫色の薄い白色に近いものも見かけます。特に、咲き始めは白っぽく見えます。

群生するウツボグサ:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)

群生するウツボグサ:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)

花の終り:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)

花の終り:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)

 

ウツボグサは若葉を食用にすることで知られています。また、花後の穂は生薬として利用されます。消炎や利尿効果が高いといわれています(廣川 薬用植物大事典ほか)。この時期の山野草としてはあまり目立ちませんが、森林セラピー体験中にウツボグサの花や茶色の穂に気が付いた人から『この野草はなんですか?』と質問されることがあります。名前を告げると『怖い肉食魚のウツボですか?』と返ってくることが多いですね。昔の武士が背負った矢入れの「靫」のことは、知らないのがふつうですよね! 薬として利用されていると紹介すると、『このようなどこにでもありそうな草が……』と感心したり、自然の凄さの一端を感じられているようです。

 

山梨市森林セラピー推進協議会 森林セラピスト / 四十物治夫(あいものはるお))


 

群生するウツボグサ:乙女湖ロードとその周辺(7月中旬)