多肉植物というのはどれも個性的な姿をしており、それが魅力のひとつでもあります。今回紹介するフェルニアも非常に個性的で、魅力あふれる多肉植物です。育てやすいこともあり、筆者がこの2年くらいイチオシにしている植物でもあります。
フェルニアはガガイモ科の植物で、南アフリカから東アフリカ、アラビア半島に分布します。トゲのような突起が並んだ、やや角張った柱状の茎を伸ばします。古い茎から新たな茎を出し、更にそこから新たな茎を出して……といったふうに生長します。タテに伸びるというより、ヨコに広がっていく感じです。
真夏の暑さにもへこたれず、ぐんぐん育ちます。むしろ熱いほうが好きなようで、7月~9月頃は目に見えて元気です。一年を通して日当たりと風通しの良いベランダに置き、冬は氷点下になるときだけ室内に避難させています。それで問題はないので、0℃あれば冬越しできると思います(ただし、水は極力控えて乾燥気味に)。安全を期して、5℃ほどあったほうが無難かもしれません。
とにかくよく増えます。株を触っていると不意に茎が親株から外れることがあります(茎が節から外れやすいのです)。外れた茎を植えておくと、根を出して新たな茎を伸ばします。また、茎が地面に接するとそこから根をだすので、根が出た部分から茎を外して別の鉢に植えてもよいでしょう。筆者はおもしろがってどんどん増やしています。
柱状の茎はどれも似ているようですが、実際は個性的で一鉢ずつ見ていても飽きません。筆者は帰宅後、毎日フェルニアを含む多肉植物をじっくり愛でるのが楽しみのひとつです。
フェルニアにはもうひとつ大きな魅力があります。それは奇妙な姿の花です。フェルニアに限らず、ガガイモ科の植物は奇妙な花を咲かせるものが多いですが、やはり実物を見ると不思議で妖しい雰囲気の花だなあと、しみじみと思います。
花のかたちはヒトデのような星形のような……何かほかの生き物のようです。花びらが思いっきり後ろに反り返って、正面から見ると丸く見えるものもあります。表面がつるりとして、作りもののように見える花、逆に一面が毛のような突起で覆われている花など、種によって見た目は大きく異なります。
また、種によってはかすかな腐臭を放つ花もあるそうですが、まだ筆者は体験したことがありません。いずれ体験したいものです(!?)。
花は梅雨頃から夏にかけて咲きます。株が大きくなったら自ずと咲くのか、ほかに花を咲かせるコツがあるのか、筆者のベランダではあまり咲いてくれません。
栽培で特に気をつけていることはありません。日当たりのよい場所で、土が乾いたらたっぷり水をやっているだけです(冬は生長しないので、かなり乾かし気味にしています)。
規模の大きな園芸店でときおり扱っているのを見かけますが、あまり広くは出回っていないと思います。筆者は親しくしている多肉植物の業者さんから入手しています。入手は難しいかもしれませんが、みなさんもぜひ、育てやすくておもしろいフェルニアの栽培に挑戦してみてください。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)