アロエは日本で古くから親しまれている多肉植物です。しかし、「アロエ」とひとことにいっても、とにかくいろんな(アロエ属の)仲間がいます。その仲間は300種、いや400種、いやいや450種はあるだろうと、文献によって差がありますがおおざっぱにそれくらいの種数はあるのでしょう。園芸品種も含めると実際の数はさらに増えると思われます。
そんな数あるアロエのうち今回は、キダチアロエ(学名:アロエ・アルボレスケンス)に注目します。キダチアロエは「昔の家庭には、だいたい一株はあった!」と筆者が勝手に思っている「苦いアロエ」です。今回記事を書くにあたり、あらためてその味を確認しました。葉の断面をぺろっとなめただけですが、強烈に苦かったです(涙)。
単にアロエというと、(種名は知らなくても)この種を連想する方が多いと思います。トゲトゲのある肉厚の細長い葉っぱを四方八方に伸ばしながら生長していきます。日本には明治の初年に入ってきたとされます。
民間薬としても有名で「医者いらず」などとも呼ばれます。筆者も子どもの頃、指先をやけどした際ポキッと折ったアロエの葉を渡され、やけどした箇所に汁を塗るように言われたことを思い出します。
誰かが植えたあと放置されたのか、道端で半ば野生化したように茂っている株を見ることがあります。高さはありませんが、枝数を増やして茂っているものが多いです。
本来は高さ2メートルに達する大型の植物で、枝分かれしてわさわさと茂ります。南伊豆を旅行したとき、それくらいに生長したアロエが盛大に茂った畑(?)をバスの車窓からながめた記憶があります。
私の住む京都では南伊豆で見たような巨大なものは見たことはありません。冬に霜などにやられて茎葉が枯れ、「春に株元から芽吹いて復活する」というようなことを毎年繰り返しているのでしょうか。
もともと生育旺盛で丈夫な植物なので、軒下や壁際など霜や寒風の避けられる場所や、霜の降りない暖地なら繁茂したアロエに半ば占領された住居、なんてものが案外あるのかもしれませんね。
案外知られていないのが、真冬に咲く花です。花茎を長く伸ばし、先端の開いた筒状の小さな花が穂状にたくさん咲きます。鮮やかな朱色~オレンジ色の花で、非常にかわいらしいです。トゲトゲした草姿とのギャップもまたよいです。
今回は筆者の思い出も混じえてキダチアロエのお話をしました。花の見られる時期は地域によって異なるかもしれませんが、だいたい12月~3月頃です。近所に大きなキダチアロエの株を見つけたら、花が咲いていないか冬のうちに訪ねてみてください。
キダチアロエ以外にも魅力的なアロエはたくさんあります。また機会があれば紹介できればと思います。
(ヤサシイエンゲイ 小林昭二)