日本全国の神社やお寺、地域によってはシンボルツリーのような扱いで、願いを叶えてくれるご神木と呼ばれる木が数多く存在しています。これは、運気、邪気、勇気、弱気、強気などの“気”と“木”を語呂合わせしているのはもちろん、実際に願いを叶える力もあるからでしょう。特に、大樹や古木には、木霊と呼ばれる精霊のようなものが宿り、不思議な力を持つといわれています。
今回ご紹介するご神木は天神様に行くと必ず出会うあのウメです。ちなみに、湯島天神で「ご神木はありますか?」と伺ったところ、「境内にあるウメは盆栽に至るまですべて天神さまが愛されたウメですのでご神木です」と教えていただきました。
ということは、湯島天神に限らず、全国約12,000社の総本宮と称えられている太宰府天満宮まで、天神さますなわち菅原道真公をお祀りしている神社のご神木はすべてウメということになります。
ちなみに、天神様は学問、至誠、厄除けの神様として知られ、ウメがどうして天神さまのご神木になったのかは諸説さまざまですが、ウメのタネを割ると硬い皮につつまれた仁があり、この仁が天神様の“神”に通じるとされたことと、菅原道真公がウメを好み「梅の花 紅の花にも 似たるかな 阿呼がほほにも つけたくぞある」など、ウメを題材にした作品が数多くあるとされていることがその理由と考えられます。
そのため、「ウメの中には天神様がいるのでタネを割ってはいけない」「粗末にしてはバチが当たる」と、江戸時代から今に至るまで太宰府天満宮には 「梅干の種納め所」 が設けられています。
梅のタネの中には天神さまがいる。これは、昔から熟していないウメの実やタネは中毒を起こしやすいので、間違って食べないようにと人々を戒める意味もあったとされたという説もあるようです。
湯島天神の境内には、樹齢約70年~80年のウメが約300本植えられた梅林があります。また境内の至るところで、ウメを図案化した梅文を見ることができ、お守りなどにも梅文が描かれています。梅文も、天神様(菅原道真公)に通じることから、開運文様のひとつとして、合格祈願、学力上昇などの願いを託すことができるだけでなく、ウメは「産め」に通じることから子宝祈願にも通じることも知られています。
- 参考文献:『和のお守り文様366日(PHP)』(藤依里子)
- ウメ(エバーグリーン植物図鑑)
- 『合格祈願の梅の木』への行き方:東京メトロ 湯島駅より徒歩3分
(写真・取材/グリーンアドバイザーふじえりこ)
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