日本の文様のなかでも、四季を通じて描かれることがとにかく多いのがモミジ。今回はそんなモミジを紹介いたします。
紅葉して人々を楽しませる姿から「世渡り上手になれる」ご利益も
カエデ属の落葉樹を図案化したものの総称が「紅葉文」です。そのため楓文とも呼ばれます。ちなみに、文様ではモミジとカエデは明確な区別はありませんが、盆栽の世界では葉が小さく切れ込みが深く、真っ赤な色に染まるものをモミジ、葉が大きく切れ込みが浅いものをカエデと区別しているようです。
カエデの名称は、葉の形がカエルの手に似ていることから「かえるで」と呼ばれていたものが転訛したといわれています。また、ニワトリの鶏冠に似ていることから鶏冠木という名も使われます。そのためニワトリの見立てとして描かれ、立身出世の願いが託されることもあります。
モミジやカエデは日本では古くから描かれてきた文様のひとつであり、代表的なものとしては、サクラと配した桜楓文やシカと配した楓鹿文があります。
モミジやカエデについて
花言葉には「自然への愛」「持続性」があります。葉の形や紅葉が美しいことから庭園に植栽され、園芸品種も多数知られています。最近の研究では、紅葉する葉にはカシスに似た有効成分があり抹消血流を活発にする働きがあるとされています。モミジもカエデも英語圏ではメープルと呼ばれます。
モミジを食する!?名物・モミジの天ぷらとは…
箕面山(大阪府箕面市)は紅葉で有名ですが、モミジの天ぷらでも知られています。ルーツは諸説あり、一説には約千三百年前に箕面山で修業していた役行者(えんのぎょうじゃ)が、箕面山を訪れる旅人たちをもてなすためにモミジを揚げてふるまったのが始まりとされています。作り方は、箕面山に自生している一行寺楓を収穫し1年間塩漬けにした後、塩抜きと水洗いしたものを小麦粉、水、砂糖、ゴマの衣をつけてさっくりと油で揚げて完成。そのため、ほかのモミジではこの味にはならないとか。物産展などで買うこともできるのでお試しくださいね。
植物と文様と
植物と文様、文様と植物は切っても切れない縁があります。とくに、日本の文様では植物文が数多く知られていますので身近な文様を探してみてくださいね。筆者は『日本の伝統文様 春夏秋冬 花尽くし(仮)』/芸術新聞社を準備中です。
(藤依里子(植物文様研究家))