日本全国の神社やお寺、地域によってはシンボルツリーのような扱いで、願いを叶えてくれるご神木と呼ばれる木が数多く存在しています。これは、運気、邪気、勇気、弱気、強気などの“気”と“木”を語呂合わせしているのはもちろん、実際に願いを叶える力もあるからでしょう。特に、大樹や古木には、木霊と呼ばれる精霊のようなものが宿り、不思議な力を持つといわれています。
木霊は「こだま」「木魂」「谺」とも書かれ、樹木に宿る精霊だとされています。そのため木霊が宿る木は、外見は普通の樹木でも、不思議な力を持っているのだとか。「不思議な力を秘めた木々……、そんなものなど見たことがない」。そう言う方もいるかもしれませんが、実は日本をはじめ世界各国には、木霊が宿っているであろう神の木が随所に存在しています。このコラムでは、そんな木々について紹介させていただきます。
『縁切り榎』は史跡のひとつにもなっています
ご神木と聞くと、縁結び、子育て、金運上昇などポジティブなお願いを叶えてくれそうな木だと思う人も。でしかし、“縁切り”にご利益があるご神木も少なくありません。そこで、第1回は、都内では知る人ぞ知る『縁切り榎』をご紹介します。この『縁切り榎』は、旧中山道沿いに江戸時代からあった正統派。いまではちゃんと交差点名にもなっているほどです。
秘密は絵馬にあり!?
写真を撮影に行ったこの日、なぜかカップルが絵馬をかけていました。なぜ、カップルで? と疑問に感じましたが、流石に声もかけられませんでした。でもそのヒミツは絵馬の中にあり!! おびただしい数の絵馬に書かれている内容は、男女の問題だけではありませんでした。『縁切り榎』には、他にも酒、薬、煙草、病気などなど幅広い縁切り祈願のご利益もあるようです。
この『縁切り榎』がなぜ江戸時代から有名だったかについて『東京の伝説(角川書店)』で調べてみると、なんでも江戸の女性は一度結婚すると相手がどんなに最低であっても女からの離縁は許されず、どうしてもという場合は尼寺に入るしか逃げる方法はなかったのだそうです。そんな時代に『縁切り榎』の木肌を削って煎じて飲ませると不思議と離縁が成立したのだとか……。
しかし、いつしか木肌を削り煎じて飲ませるのではなく、『縁切り榎』に絵馬を奉納し手を合わせることで祈願するようになりました。新しくスタートしたい、新しい出会いを求めたい! 時には、過去を受け入れるのではなく断捨離することも必要なのかも。今年こそ自分を変え、前向きに歩いて行きたいと思っている方は、年の初めにぜひこの『縁切り榎』を訪れてみてはいかがでしょうか。
この『縁切り榎』周辺には商店街や名跡などもありますので散策にもうってつけの場所となっています。
- 榎について(エバーグリーン植物図鑑)
- 縁切りの木 『縁切り榎』(都営三田線/板橋本町駅より徒歩5分)
(グリーンアドバイザー ふじえりこ)
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