今年の夏は40度超え! なんてニュースも飛び込む昨今。こんな季節はやっぱり浴衣! 浴衣ですね。でも、浴衣に描かれている植物文様には夏とはほど遠いものもありますね……。そこで今回は浴衣に描かれている植物文様についてお話しさせていただきます。
夏の文様なのにサクラ?
植物文様の使い方の基本は、次の季節の植物を取り入れること。しかし、浴衣の文様にはサクラ文様が目につきます。これはサクラが日本の国花とされており、季節を問わない植物文様のひとつとされているからです。もちろん同様の考えでキクも季節を問わず使われます。着物、帯、小物、器の購入で迷った場合には、サクラかキクを選べば季節を関係なく使うことができるので無難かも知れません。
ちなみに、浴衣ではサクラと共に雪輪、雪華(花)と呼ばれる雪をモチーフにした文様が描かれていることも少なくありません。これは暑い夏を少しでも見る人が涼しく感じることができるようにいった、いにしえに生きた人の知恵だとされています。
スイセンの文様もありました
浴衣の植物文様、最近ではなんでもあります。これはいにしえの時代と現代では考え方が少し変わってきたからなのかも知れません。とはいえ、日本人にとってふだんの洋服や会社での洋服は無地が多いなか、浴衣はある意味でいろいろな花文様を楽しむことができるものかも知れません。なかでもスイセンは、日本の植物文様ではほかの植物文様に比べるとやや少ないような気がします。これは、スイセンが日本人になじみが薄いからではなく、毒性が強いからではないでしょうか。これは著者の勝手な推測ですが。
スイセンは漢字で「水仙」と書き、中国の古典のなかで「天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」呼び、仙人と結びつけてとらえられることから、長寿の象徴としても扱われています。
浴衣の定番といえば、やっぱりアサガオ
アサガオ市をはじめ夏の風物詩・アサガオ。浴衣の文様のなかでも定番です。そんなアサガオは奈良時代に中国から渡ってきたとされています。当時は牽牛子(けんごし)と呼ばれており、花を楽しむのではなく種が下剤として使われていたとされています。そのため、アサガオの文様には病気治癒の願いを託すこともできるのです。いにしえの時代から今に伝わる植物文様。育てることも素敵ですが、ときには植物のエピソードに触れてみるのはいかがでしょうか。
(藤依里子 植物文様研究家/グリーンアドバイザー)