植物図鑑
タチバナ
ミカン属
タチバナ
学名:
Citrus tachibana
〔基本情報〕海岸に近い山地の常緑樹林内でみられる高さ2~6mになる常緑小高木。
若い枝は緑色で、やや扁平、0.5~1cmほどの太く鋭い刺があります。
葉は互生し、長さ4~8cm、幅2~4cmの卵状長楕円形~卵状楕円形で、縁は全縁または浅い鋸歯があります。
葉は単葉のようですが、複葉が退化したもので、ごく狭い翼葉があります。
葉柄は長さ0.4~1cmです。
花は新しい枝の葉腋に単生し、白色の5弁花で芳香があります。
花弁は長さ0.8~1cmです。
多数の雄しべが花糸の中部まで合生し雄ずい筒をつくります。
果実は長さ2~2.5cm、径2.5~3cmの扁平な球形で、黄色く熟します。
果汁は酸味が強く、生で食べるには向きません。
〔来歴〕寺社の境内に古くから植えられます。
常緑であることから「永遠」をイメージするので喜ばれます。
古事記・日本書紀にある不老不死の霊薬「非時香菓(トキジクノカクノコノミ)」がタチバナを指すことから、京都御所の紫宸殿には右近の橘として植えられています。
実と葉を家紋としてもちいます。
また、文化勲章は橘をデザインしています。
〔利用〕他のカンキツ類の台木として用いられます。
〔栽培〕増殖は接木によります。
寒さを嫌うので、冬の北風をさけられる建物の南側に植えるとよいです。
庭木として用いる場合、関東南部以西の冬季でも温暖な地方に向きます。
それ以外の地方では鉢植えがよいです。
日当たりと水はけ、水もちのよい場所を好みます。
幼木のうちは移植容易ですが、成木では困難です。
水やりは地植えの場合、晴天が続いて乾燥しないかぎりは必要ありませんが、幼木のうちは夏によく水を与えて枝をよく伸長させると生育が早くなります。
鉢植えの場合は土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。
施肥は春と秋に有機質の肥料か速効性がある化成肥料を施します。
枝が繁りすぎて、樹冠の内部が日照不足となると枝が枯れます。
枯れ枝は病虫害の原因となり、実つきも悪くなることから、3月頃に適度に製枝・剪定し、内部まで日が当たるようにします。
実が多くついた場合は7~8月に摘果をおこないます。
病虫害としてはミカンハモグリガ、カイガラムシ、ハダニ、アブラムシなどがあります。
アゲハチョウの食草です。