EVERGREEN - エバーグリーン

← AI作成記事一覧

庭で咲く「お茶の花」、今が見ごろです
——ツバキ科の秋花・チャノキを知れば、いつものお茶がもっとおいしくなる

公開

毎日飲んでいるお茶の木の花を、あなたは見たことがあるだろうか。10月下旬、チャノキ(学名 Camellia sinensis、ツバキ科ツバキ属)は静かに花盛りを迎えている。白い花弁と黄色い雄しべが愛らしい、ツバキそっくりの小花だ。ところが、なぜかほとんどの人が「見たことがない」という。その謎を解くと、日本のお茶文化の深い仕組みが見えてくる。

チャノキの白い花——濃緑色の葉の間に複数開花している
チャノキ Camellia sinensis / 白い花弁と黄色い雄しべが印象的な秋の花 写真: エバーグリーン植物図鑑

10月、チャノキは花盛り——でも「よく知らない花」の代表格

エバーグリーンのQ&Aコーナーには、毎年秋になると「この白い花は何ですか?」という問い合わせが届く。答えはいつも同じ——チャノキ、すなわち日常のお茶の木だ。

チャノキです。すなわち、よくご存知のお茶っ葉をとる木のことです。ツバキに似た花をうつむき加減で咲かせます。 — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2016年11月、質問 #243)

チャノキの花期は10月から12月。10月下旬はまさに咲き始めの時期で、庭木や生垣として植えられた株に白い小花がいっせいに開く。ところが、お茶を毎日飲んでいても「チャノキの花を見たことがない」という人は少なくない。理由は次の章で明らかになる。

チャノキです。いわゆるお茶です。 — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2016年10月、質問 #206)

花には花言葉もある。エバーグリーンポストの既報によれば、チャノキの花言葉は「追憶」「純愛」。小さく、うつむき加減に咲く姿そのままの言葉だ。

ツバキとそっくり、でも「長い花柄」が決め手——花の見分け方

チャノキの深緑色の楕円形の葉が密に茂り、葉縁に細かい鋸歯が見られる
深緑色の楕円形の葉。縁の鋸歯と葉脈の凹みがチャノキを見分けるポイントになる 写真: エバーグリーン植物図鑑(Q&A #1507)

チャノキはツバキ科ツバキ属で、同じ仲間にサザンカやツバキ、ヤブツバキがいる。花の印象はたしかによく似ている。

チャノキです。ツバキの仲間ですから似ていますね。 — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2017年11月、質問 #1407)

見分けのポイントは、チャノキの図鑑データにはっきり現れている。花は径2〜3cmの白色で、花弁は5〜7枚。雄しべが多数あり、これはツバキ・サザンカと共通だ。ただしチャノキの花柄は長さ1.2〜1.4cmあり、しかも下向きにかぎ状に曲がっている。この「かぎ形に曲がった長い花柄」こそが、チャノキの花を確認するうえで最も手がかりになる特徴だ。花は枝先の葉腋またはその下方の葉芽の最下鱗片葉の腋に単生するため、葉の陰にひっそりと、うつむいて咲く。

葉もチャノキを判別する重要な手がかりになる。図鑑によれば、葉は長さ5〜9cm・幅2〜4cmの楕円形で表面に光沢があり、主脈と側脈が表側で著しく凹んでいる。この葉脈の凹み方は、エバーグリーンQ&Aで専門家も「葉脈の入り方からチャノキでしょう」(質問 #21907)と指摘するほど顕著な特徴だ。

同属の3種を花の時期で比べると、チャノキとサザンカが10〜12月に咲くのに対し、ヤブツバキは主に11月〜翌4月と少し遅れる。秋に庭でうつむき加減の白い小花を見かけたら、花柄の形と葉脈の凹み方を確認してみよう。

茶畑に花が少ない理由——農家が花を「嫌う」わけ

チャノキの花は可愛らしいのに、お茶農家にとってはやっかいな存在だという。エバーグリーンポストの編集記事「お茶農家にとっては厄介者? ~茶の花」によれば、チャノキが秋に花を咲かせるのは翌年に向けて栄養を蓄えるべき時期であり、花や実に栄養が分散すれば収穫量が下がりかねない。また、木が弱っているときに花が多く咲くともいわれており、農家が花を望まない背景にはこうした事情がある。

茶畑では滅多に花を見かけることはありません。 — エバーグリーンポスト「お茶農家にとっては厄介者? ~茶の花」

なぜ茶畑では花が咲かないのか——その植物学的な仕組みを、入間市博物館が詳しく解説している。チャノキの花芽は今年伸びた枝につく。茶畑では新芽の部分を収穫するために畝の上部を刈り込むため、その枝ごと花芽もなくなってしまう。花が見られないのは偶然ではなく、収穫の構造そのものが招く必然なのだ。

同館によれば、枝を刈らない畝の側面や下部、あるいは新芽の収穫をしない茶の木には花が多く咲くという。庭木や生垣として植えられたチャノキに秋の花が豊富なのも同じ理由だ。図鑑「栽培」欄にも「花芽は初夏〜夏にできるので、剪定する場合は新芽が出る前の4月頃がよい」とある。剪定の時期を誤るとせっかくの秋花が失われてしまうので注意したい。

なお、農家には厄介者でも、チャノキの花そのものは飲用できる。エバーグリーンポストの記事によれば、乾燥させたものにお湯を注ぐだけで、菊の花茶のように手軽にいただけるそうだ。

スポンサーリンク

花と実が同時に見られる——秋のチャノキは「2シーズン分」が楽しめる

チャノキの白い花2輪と緑色の丸い実が同じ枝についている
今年の花2輪と昨年の果実が同じ枝に並ぶ、秋のチャノキならではの光景 写真: エバーグリーン植物図鑑(Q&A #5174)

秋のチャノキには、もう一つ見どころがある。今年の花と、昨年の果実が同じ株に同時に並ぶという、植物としてやや珍しい光景だ。

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 九州支所の樹木図鑑には、「種子は暗褐色を呈し、成熟は翌年10月であるので果と花が同一株で見られる」と記されている。つまり今年10月に咲いた花の果実が熟するのは、ちょうど1年後の翌10月——次の花の季節に重なる。

図鑑によれば、果実は蒴果で径1cmの球形。果皮が厚く、中に褐色の種子が入っていて、熟すと裂開する。上の写真でも、白い花2輪のかたわらに緑色の丸い実が写っており、秋の株では花と実を同時に観察できる。庭のチャノキがあれば、ぜひ両方を探してみてほしい。

庭やベランダで育てるなら——「根が深い」チャノキとの上手な付き合い方

チャノキの全体の草姿——光沢ある緑の葉を密につけた丸みのある低木
光沢ある葉を密につけた低木の姿。萌芽力が強く、生垣にも向く 写真: エバーグリーン植物図鑑(Q&A #5234)

チャノキを庭に迎えるうえで、最も知っておきたい性質が深根性だ。図鑑「栽培」欄には「根が深くまで伸びるので、地植えの場合、根づいた後の移植は難しい」とある。国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 九州支所も「チャノキは深根性で移植力が弱く、実生にたよる」と記している。植える場所は最初にじっくり決めたい。

場所を選ぶ際のポイントは、図鑑「栽培」欄にまとめられている。日向〜半日陰で育つが、西日が当たる場所や暗すぎる日陰は避ける。冬の北風も避ける。水はけがよく深い土を好む。栽培適地は東北地方南部より南で、寒さに弱く、低温や霜に当たると枯れることがある。

種子から育てる場合は、図鑑「栽培」欄の注意書きが決定的に重要だ。「種子は乾燥させると発芽率が極端に落ちるので、とりまきとするか、乾燥させないように貯蔵する」とある。「とりまき」とは、採った種子を乾かさずに、そのまますぐまくことだ。入間市博物館も「種子の寿命は短く、時間が経てば経つほど芽が出にくくなります」と説明しており、10〜11月に熟した実から種子を取り出したら、できるだけ早くまくのが基本だ。

萌芽力が強く、刈り込んで生垣にできる点も魅力だ。盆栽や鉢植え、切花としても用途が広い。病虫害ではチャドクガに特に注意が必要で、図鑑「栽培」欄には「触れただけでも皮膚がかぶれる」と記されている。作業時は肌の露出を避けたい。

スポンサーリンク

→ 図鑑で「チャノキ」の詳細を見る

← AI作成記事一覧