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「悪い茄子」——
刺だらけの北米帰化草、ワルナスビ

畑や草地でナスに似た白〜淡紫の星形の花を咲かせ、全身に鋭い刺を備える多年草——ワルナスビ(ナス科ナス属)です。北アメリカ原産で、エバーグリーン植物図鑑によれば明治時代に帰化が確認されて以来、本州以南の暖地に広がっています。図鑑では外来生物法の要注意外来生物に指定されていると記され、一度根付くと長い根茎で繁茂するため、農家や家庭菜園の管理者にとって頭の痛い存在です。

ワルナスビの花と刺
ワルナスビ Solanum carolinense / 写真: エバーグリーン植物図鑑

名前の由来——「悪い」には訳がある

和名「ワルナスビ」は、文字どおり「悪い茄子」を意味します。ナスに似た花と実をつけながら、茎・葉柄・葉裏の脈上に鋭い刺を持ち、抜こうとすると刺に阻まれる厄介者であることが、この名の背景にあります。

学名は Solanum carolinense L.。種小名 carolinense は「カロライナの」を意味し、原産地である北アメリカのカロライナ地方を示します。英名は、米国農務省(USDA)の植物データベースでは Carolina horsenettle、日本雑草学会の解説では horsenettle(アメリカ雑草学会による)と記されています。

姿と形——刺と星状毛に包まれた体

エバーグリーン植物図鑑の記載によれば、高さは50〜100cmになる多年草で、長い根茎をもちよく繁茂します。茎は直立してよく枝分かれし、節ごとに曲がります。茎には星状毛が密に生え、葉柄や葉の裏面脈上とともに刺が生えます。葉は互生する単葉で、長さ8〜15cm・幅4〜8cmの長楕円形。両面に星状毛が生え、縁には3〜4個の大きな鋸歯があります。茎の途中から散形花序を出し、6〜10個の花をつけます。花冠は径1.8cmで白色〜淡い紫色、星形に5裂します。果実は径1.5cmの球形で、黄色く熟します。

日本雑草学会の解説でも、花はジャガイモの花に似た白〜薄紫の5裂で、茎・葉柄・葉裏の葉脈沿いに鋭い棘があるとされ、そして熟した果実については明確に「有毒」と記されています。

⚠️ 果実は有毒です。果実は黄色〜橙黄色に熟してミニトマトのように見えますが、日本雑草学会の解説に「熟すと橙黄色になる液果で有毒」と明記されています。人や家畜の誤食に注意してください。
果実が有毒であるため牧草地での発生や飼料への混入が問題になるほか、茎葉の鋭い棘が怪我の原因になる。 — 日本雑草学会「ワルナスビ

エバーグリーンのQ&Aでも、専門家がワルナスビの刺を識別の重要なポイントとして繰り返し指摘しています。

トゲもありますし、ワルナスビですね! — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2021年9月、質問#21591
ワルナスビは刺がすごいので異なりますね。 — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2021年8月、質問#21283
増えるのとトゲがすごいのでお気をつけください — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2021年5月、質問#20305

花期と果実——4月から10月まで咲き続ける

エバーグリーン植物図鑑によれば、花期は4月〜10月と非常に長く、春から秋にかけて断続的に花と実をつけます(日本雑草学会は開花・結実期を6〜9月とします)。白色〜淡紫色の星形の花はナスやジャガイモの花によく似ており、慣れないと混同しやすいことがあります。果実は秋に黄色く熟し、丸くてつやがあり、一見食べられそうに見えますが有毒です。

ワルナスビの実です。 — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2022年9月、質問#23323

来歴——明治の末、牧草に混じって千葉へ

エバーグリーン植物図鑑の「来歴」欄によれば、明治時代に帰化が確認され、本州以南の暖地に広がっています。侵入の経緯について、農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)の外来雑草解説はより具体的に記録しています。

明治の末、千葉県に牧草に混じって侵入していたという。関東地方では広く害草化し、他地方にも広がる。 — 農研機構「写真で見る外来雑草:ワルナスビ

農研機構によれば、現在は飼料畑や永年草地のほか、道路の植え込みや水田の畦畔などでもしばしば見かけられます。

要注意外来生物——なぜ問題視されるのか

エバーグリーン植物図鑑の「備考」欄には「外来生物法で要注意外来生物に指定されています」と記されています。なぜこれほど問題視されるのでしょうか。

最大の理由は根による旺盛な栄養繁殖です。日本雑草学会の解説によれば、根系は水平根と垂直根から構成され、切断された根の断片からも再生します。そのため、頻繁な刈取や除草剤で地上部を一旦抑えても、地下部を含めた群落全体を根絶するのは困難とされています。

切断された根断片には再生能力があるため、耕起はかえって雑草害を大きくさせる恐れがある。 — 日本雑草学会「ワルナスビ

加えて、前述のとおり果実が有毒であるため、牧草地に混入すると家畜への被害も懸念されます。刺・繁殖力・毒性の三拍子がそろっているのです。

見分け方——似た仲間と比べてみる

ワルナスビはナス属の帰化植物の中でも、刺の有無が最もわかりやすい識別点です。花の似るイヌホオズキ類(アメリカイヌホオズキ・イヌホオズキ・オオイヌホオズキ)には刺がないため、刺があればまずワルナスビの仲間と考えてよいでしょう。ただし花色は個体や環境で変わるため、花だけでの判断は難しいことがあります。

ワルナスビやイヌホオズキなどの白花のナス科の花は、環境や個体によってこのように紫色の花をつけることがあります。この写真では種の識別は難しいです。花の付き方、がくの形状、実などがわかる写真を確認する必要があります。 — エバーグリーンQ&A 専門家回答(2020年12月、質問#18486

エバーグリーン図鑑の各種ページをもとに、ナス属の近縁種を比較すると次の通りです。

種名 刺の有無 草丈 花色 花期
ワルナスビ あり(茎・葉柄・葉裏) 50〜100cm 白〜淡紫 4〜10月
キンギンナスビ あり 50〜100cm 5〜9月
アメリカイヌホオズキ なし 40〜80cm 紫・白 5〜12月
イヌホオズキ なし 20〜90cm 8〜10月
オオイヌホオズキ なし 紫・白 8〜12月

※ 表の数値は上記各種のエバーグリーン図鑑ページの記載によります。

北アメリカでの扱い——"horsenettle" という厄介者

原産地の北アメリカでは、ワルナスビは "horsenettle" と呼ばれる農業上の厄介な雑草です。米国農務省(USDA)の植物データベースにも Solanum carolinense(英名 Carolina horsenettle)として掲載されており、アメリカ本土(48州)に自生する多年草として記録されています。

防除のポイント

ワルナスビを庭や畑で見つけた場合は、早期に対処することが大切です。日本雑草学会の解説によれば、刈取や除草剤の施用に加え、侵入の初期段階から、茎葉の棘に注意しつつなるべく根系まで抜き取って除去することが有効とされています。刺があるため、必ず厚手の手袋を着用してください。

一方で、切断された根の断片から再生するため、耕耘(耕起)はかえって被害を広げる恐れがあります。小さな根の断片が残ると再生するので、複数回にわたって根気よく除去を繰り返す必要があります。

→ 図鑑で「ワルナスビ」の詳細を見る

参考

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