植物図鑑
ヒアシンス
ヒアシンス属
ヒアシンス
学名:
Hyacinthus orientalis
〔基本情報〕地下に鱗茎をもつ多年草。
鱗茎は鱗片葉が層状になった層状鱗茎で、外側が薄い紙状の外皮に覆われます。
外皮の色は花色のほぼ同じ色となります。
葉は根生し、長さ20cm、幅2cmほどの線形で肉質、全縁です。
葉の中心部から太い花茎を出し、花茎は高さ30cmになり、多数の花を総状につけます。
花は鐘形~漏斗状で先は6裂し、裂片が開出~反転します。
花は青、紫、赤、桃、白、クリーム色と多彩です。
花には強い芳香があります。
オランダを中心に品種改良されたダッチ・ヒアシンスとフランスで改良されたローマン・ヒアシンスの2系統があります。
ローマン・ヒアシンスは強健で作りやすいが花が小さくまばらなため、ダッチ・ヒアシンスのほうが一般的には普及しています。
〔来歴〕1543年に世界最古の植物園「オルト・ボタニコ」で栽培されたのが始まりです。
17世紀のチューリップに続き、18世紀にはヒアシンスの栽培ブームが到来し、投機目的もあって高値で取引されました。
日本には江戸時代安政年間(1854~1860)に渡来し、大正時代に入ってから一般的に栽培されるようになりました。
かつては2,000種類ほど品種があったされていますが、品種ごとの変化は大きくなく、現在一般に栽培されているのは50品種ほどです。
〔利用〕花に強い芳香があるため香料原料として用いられます。
〔栽培〕一定の低温に当たらないと花芽がつかないため11月いっぱいくらいまでは寒さに任せたほうがよく花が咲きます。
水栽培が一般的ですが、土に植えたほうが毎年花が楽しめます。
水栽培の場合は水栽培用の鱗茎をもちい、鱗茎の底がわずかに浸るくらい水を入れます。
根が伸び出したら水位を2cmほど下げて空気に接する水面を広くして、根の基部が空気に触れ、呼吸できるようにします。
鱗茎の貯蔵用分で育つため、施肥は必要ありません。
水は汚れるので1週間に1回は交換します。
根が出るまで11月いっぱいくらいまでは寒さに任せ、その後室内で管理すると葉や花茎の伸びがよくなります。
土で栽培する場合は日当たりと水はけがよい砂質で中性~ややアルカリ性の土壌を好みます。酸性の土壌を嫌います。
鱗茎はかならず上下をまもり、先が土の上にちょっと出るくらい浅く植えます。
植えてから葉が枯れるまでは土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。
施肥は元肥のほか、葉が出てから開花まで10日に1度ほど液肥を与えます。
2~3年は植えっぱなしでも大丈夫です。その場合、葉が枯れて休眠に入ったら雨が当たらない場所に移動させます。
鱗茎を掘り上げる場合は、花が終わり、葉が枯れはじめたらおこないます。掘り上げた後、風通しの良い日陰で2~3日乾燥させてから茎葉を落とし、そのまま同様の場所で秋に植えつけるまで貯蔵しておきます。
増殖は分球によります。
ローマン・ヒアシンスは分球しやすいですが、ダッチ・ヒアシンスは分球しにくいので人工的に増殖させます。
花後に掘り上げた鱗茎を6~7月頃、底から半分くらいの深さまで十字または3分割に切れ込みを入れます。
使用するナイフはよく消毒してからおこないます。
5~7日ほど高温多湿の場所に置いた後、秋に植えつけるまで日陰で風通しのよい涼しい場所に貯蔵しておくと切り口に小球が多数つきます。
この小球がついた鱗茎を切り口を下にして植えつけると翌春に多数の鱗茎となり2~3年で開花します。
病害虫としては軟腐病、モザイク病、センチュウなどがあります。
〔備考〕名はギリシア神話に出てくるスパルタの王子・ヒアキントゥスの名に由来するとされます。