植物図鑑
セイヨウシナノキ
シナノキ属
セイヨウシナノキ
学名:
Tilia ×vulgaris
〔基本情報〕
フユボダイジュとナツボダイジュの交雑種で、大きいものでは高さ50m、幹径5mにもなる落葉高木。
フユボダイジュとナツボダイジュの中間的な性質をしていて、葉の大きさや葉脈はフユボダイジュ、枝の形や花の数、果実の形はナツボダイジュに似ます。
野生状態でみられるものは数少ないです。
樹形は卵形です。
若い枝は無毛です。
葉はジグザグに2列互生する単葉で、長さ6~15cm、幅6~12cmの広卵形となり、基部は心臓形、葉先は尾状に伸びてとがります。
葉の縁には鋸歯があります。
葉柄は長さ3~6cmで、毛はありません。
花は葉腋から垂れ下がった細い花柄に集散状に4~10個つき、黄白色の5弁花です。
花序には長さ10~15cm、幅1.5~2.0cmでへら形の苞がつきます。
花には香りがあります。
果実は径8mmほどの卵円形で稜があります。
〔来歴〕
シューベルトの『菩提樹』はこの木を指します。
中世ヨーロッパでは自由の象徴とされました。
〔利用〕
中世ヨーロッパでは自由の象徴とされ、ヨーロッパでは街路樹としてよく植えられています。
材は楽器や彫刻などに用いられ、ライム材の名で出回ります。
樹皮から繊維が採れ、縄や網、籠など工芸品に用いられます。
花を煎じた汁は民間薬として子供の吹き出物に使われます。
フランスでは花をハーブティーとして飲みます。
またハチミツの蜜源樹としても有名です。
〔栽培〕
増殖は実生によります。
熟した果実を採り、果皮を取り除いてとりまきにするか、乾かないよう湿らせた砂などに入れて密閉し冷暗所で保存して翌春に播きます。
種子は休眠性が強いので発芽までに1~3年かかります。
苗木のうちは耐陰性があり、単植よりは3本束植えや寄せ植えなど密植状態で数年育てるのがよいです。
やや冷涼な気候を好み、高温多湿を嫌います。
日当たりと水はけ、風通しのよい肥沃な土壌を好みます。
環境があえば大木となるので広いスペースが必要です。
水やりは成木では降雨にまかせますが、夏に乾燥して水切れすると早くに落葉します。
施肥は元肥を施せば特に必要ありません。
病虫害としてはすす病、アブラムシなどがあります。
〔備考〕
木にはしばしば大量のアブラムシがつき、吸汁して余分な甘露を排出し、その総量は年間1平方メートルあたり1kgの砂糖に匹敵するという報告があるそうです。
これにより、木の周囲の窒素固定菌を増やし、養分としての窒素が得やすくなっているのではないかといわれています。