植物図鑑
シクンシ
シクンシ属
シクンシ
学名:
Quisqualis indica var. villosa
〔基本情報〕
高さ2.5~8mになる常緑つる性低木で、はじめは低木状で、のちにつるとなります。
葉は対生する単葉で、長さ7~15cmの楕円形~長楕円形、葉先はとがり、葉の裏には短い軟毛がはえ、葉の縁は全縁です。
葉柄の下部に関節があり、葉が落ちると残った葉柄の一部が刺状になります。
枝先や葉腋から円錐状の花序を出し、多くの花をつけます。
花は5弁花でモモの実のような甘い芳香があり、咲き進むにつれ色が変化します。
咲きはじめは白色で夕方に開き、2日目はピンク色、3日目には赤色になり、1株で咲き分けているように見えます。
花色の変化はオオスカシバやハチ、鳥など花粉交配者を増やすための戦略と考えられています。
花の向きも咲きはじめは横向きで、のちに垂れ下がっていきます。
萼筒は長さ7~8cmにもなり淡い緑色で、子房と合着し、花弁は萼裂片と互生して萼筒上端につきます。
雄しべは10個で萼筒上部の内面につき、雌しべの花柱は萼筒内側の途中から出ます。
果実は長さ3~3.5cmの紡錘形の乾果で、縦に5つのはっきりとした稜があり、暗褐色に熟します。
〔来歴〕
石垣島や西表島に野生化しています。
〔利用〕
果実を生薬名でシクンシ(使君子)といい、蛔虫などの駆虫剤や整腸に用います。
熟した種子は甘く、アーモンドのような風味があり、種皮などを取り除けば食べられますが、2~3個食べただけで体調を崩した例もあるといいます。
〔栽培〕
増殖は挿木によります。
冬越しには13℃以上保てるように、冬は日当たりのよい室内に取り込みます。
日当たりと水はけがよい土壌を好みます。
水やりは鉢植えの場合は春~秋は土の表面が乾いたらたっぷりと与え、冬は乾かし気味に管理し、地植えの場合は降雨にまかせます。
肥沃な土壌であれば施肥は特に必要ありませんが、鉢植えでは春~秋に緩効性化成肥料を置き肥します。
病虫害は特にありません。
〔備考〕
和名は生薬名に由来するもので、天子から授かった貴重な薬という意味合いです。