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秋の並木に「ゴマ団子」がぶら下がっている?
— プラタナスが「鈴懸の木」と呼ばれるわけ —

公開

「これは何の実ですか?」——2019年9月、東京で撮った丸い実の写真が、エバーグリーンのQ&Aに投稿された。周りにそれらしい木は見当たらなかったという。ほかの利用者からは「ゴマ団子そっくり」という声も上がった。専門家の答えは「プラタナスの実」。図鑑によれば、プラタナス(スズカケノキ属、学名 Platanus)の実のなる季節は10月から11月。街路樹の枝先にこの玉を探すなら、まさに今からだ。プラタナスの仲間(スズカケノキ属)の和名には、スズカケノキ、モミジバスズカケノキのように「スズカケ(鈴懸)」が付く。そのうちモミジバスズカケノキの和名は、枝から下がる丸い実を、山伏の装束に見立てたものだという。

まだら模様の太い幹のまわりに、大きく切れ込んだ緑の葉が茂るプラタナス
プラタナス Platanus。まだら模様の樹皮と大きな葉 / 写真:エバーグリーン植物図鑑

枝に吊り下がる、丸い実の正体

図鑑の「基本情報」欄によれば、プラタナスの果実は、痩果(そうか)が集まった球形の集合果で、枝から吊り下がる。あの丸い玉は、1つの実ではなく、痩果という小さな実がたくさん集まったかたまりなのだ。種子は風で散布される。

枯れた葉のそばに、表面が細かくでこぼこした茶色い丸い実が1つぶら下がっている
「これは何の実ですか?」と尋ねられた丸い実(Q&A 質問#10273、2019年9月・東京)

冒頭の質問#10273の投稿者は、専門家の答えにお礼を述べたあと、「中は、綿毛と種で食べられないみたい」と書き添えている。この実がどの種のものかまでは質問からは分からないが、秋田県の森づくり活動を支援する窓口、あきた森づくり活動サポートセンターのモミジバスズカケノキの解説によれば、その集合果には果肉がまったくなく、綿毛がぎっしり詰まっているという。直径は4cmほど。落ちると球形の集合果がばらばらに分かれ、1個の集合果に入っている種子は約500個にもなる。

プラタナスの仲間のモミジバスズカケノキについて、図鑑は、集合果がふつう2個、まれに3個吊り下がり、長く残ると書く。見つけた実は、しばらく枝先で楽しめそうだ。

ちなみに、玉の形は春の花の時点ですでに現れている。図鑑によれば花は4〜5月に咲き、雄花も雌花も球形の花序となって、長い柄で吊り下がる。モミジバスズカケノキの場合、雌花序は径1.5cmほどで赤みがかり、その柄は10〜15cmほどもある。春の花の玉も、秋の実の玉も、丸い姿で枝から下がる点は同じだ。

「鈴懸」は山伏の装束から

モミジバスズカケノキの和名の由来について、前出のあきた森づくり活動サポートセンターの解説は、多数ぶら下がる鈴のような果実を、山伏が法衣の上から身に着ける「スズカケ」に見立てたもの、と説明している。

では、山伏の「スズカケ」とはどんなものなのか。風俗博物館(COSTUME MUSEUM)が公開する「日本服飾史」の「山伏」のページには、修験の法衣として、頭に頭巾(ときん)、身に篠懸(すずかけ)、結袈裟(ゆいげさ)などを着ける、とある。

一方、エバーグリーンのQ&Aには、別の植物の名前をめぐって、この装束に触れた専門家の回答がある。花の名前を尋ねられた専門家は、それがスズカケソウであると答え、「山伏が前にかけているポンポンのようなのを鈴懸といいますが、それに由来します」と説明している(質問#82)。モミジバスズカケノキとスズカケソウ。まったく別の植物が、どちらも山伏の装いにちなむ名をもっているのは面白い。

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まだらの幹と、手のひらのような葉

実と並んでプラタナスを見分ける手がかりになるのが、幹と葉だ。2019年6月、質問#8174の投稿者は、「市内街路樹でよく見かけます、特徴のある樹肌を呈します」と、幹と葉の写真を添えて名前を尋ねた。2枚目の葉の写真については、葉の根元にも特徴があると書き添えている。専門家の答えは「プラタナスであっています」。

図鑑によれば、プラタナスは大きいものでは高さ40m、幹の径1〜2mにもなる落葉高木。樹皮は不規則にはがれて、まだら模様になる。モミジバスズカケノキの樹皮は、鱗のようにはがれて、濃い褐色と灰緑色、緑白色の3色のまだらになるという。

大きく切れ込んだ緑の葉が重なり、枝先に明るい黄緑色の若い葉が出ている
街路樹のプラタナスの葉。手のひらのように裂けた葉と、枝先の明るい若葉(Q&A 質問#8174、2019年6月)

葉は互生し、手のひらのように3〜7つに裂けて、葉脈も手のひら状に走る。若い枝や若葉には、はじめ星状毛(せいじょうもう)が密に生える。変わっているのは葉の付け根で、図鑑には「葉柄は基部が膨らんで冬芽を覆います」とある。葉がついているあいだ、冬芽は葉柄の付け根にすっぽり覆われている。

そして図鑑によれば、葉は秋に黄色く色づく。実が熟すのと同じころ、並木は黄葉の季節を迎える。

並木の木として選ばれ、植え替えられてきた

図鑑の「来歴」欄によれば、日本には明治時代に導入され、モミジバスズカケノキ、スズカケノキ、アメリカスズカケノキの3種が栽培されている。図鑑のモミジバスズカケノキのページによれば、この種はスズカケノキとアメリカスズカケノキの交配種と考えられている。

図鑑の記述には、街路樹に向く性質が並ぶ。「耐候性」欄には耐排ガス性があり、「栽培」欄には、日当たりさえよければ土質を選ばず、やせ地でもよく育つとある。「用途適性」欄にも街路樹、公園・庭園、盆栽が並ぶ。

外部の資料では、あきた森づくり活動サポートセンターの樹木解説が、プラタナスをマロニエ、ボダイジュ、ニレと並ぶ世界の四大街路樹の一つに挙げている。同じ解説は弱点として、生長が速いぶん枝の手入れに手間や費用がかかることも挙げている。

大阪の御堂筋では、かつてプラタナスとイチョウが区間を分けて植えられた。エバーグリーンの編集記事「[イチョウ]花めぐり10月号」によれば、御堂筋に4列の街路樹を植えるにあたって、役所内の会議では当時流行していたプラタナスが主流を占めた。イチョウを推す少数派との折衷案として、大阪駅前から大江橋まではプラタナス、大江橋から南はイチョウと決まったという。同記事は、現在では大江橋北側のプラタナスはすべてイチョウに植え替えられている、と記している。

育て方のポイント

図鑑の「栽培」欄によれば、増やし方は実生(みしょう)——つまりタネから育てる方法——と挿し木。日当たりと水はけがよく、肥沃で適度に湿った土を好むが、環境への適応力が高い。水やりは、鉢植えなら土の表面が乾いたらたっぷり与え、地植えなら降雨にまかせる。肥料は寒肥として、有機質の肥料を株の周りに施す。植え付けの適期は11月から3月。「虫害」欄には、アメリカシロヒトリとテッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が挙がっている。

大きいものでは40mにもなる木なので、身近で楽しむなら並木や公園の木を見に行くのがいちばんだ。実のなる10月から11月、黄色く色づく葉のあいだに、丸い「鈴」がいくつ下がっているか、見上げて数えてみたい。

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